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《獣医師コラム》猫がかかりやすい病気とその原因をまとめてご紹介!

こんにちは、レティシアン専属獣医師のYです。

「猫が多くかかる病気」というと、皆様はどんな病気を思い浮かべられますか?

猫オーナー様にとって、おそらくもっともイメージしやすいのは「腎臓病」ではないかと思いますが、「猫がかかりやすい腎臓病以外の病気といえば?」と聞かれると、意外と思い浮かばない方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、意外と知られていない “猫に多い病気” とその原因についてご紹介させていただきます。最後までお付き合いいただければ幸いです。

【ライフステージ別】猫がかかりやすい病気について

子猫がかかりやすい病気

生後12週ごろまでは、体内に入ってきた病原体などの異物を防ぐ役割がある「抗体」を持つ量が少ないため、免疫機能が低下しています。これは「免疫のはざま」と呼ばれ、体調を崩しやすく病気にかかりやすい時期となります。

症状としては、嘔吐・下痢・くしゃみ・結膜炎・目やに・鼻水などが多く、その原因はウイルス感染による呼吸器疾患や寄生虫感染による消化器疾患などが多い傾向にあります。

自己免疫力が不安定な時期なので、適切な室温管理(22~26℃)を行えているか、食事や水分をしっかり摂れているか、便の状態に異変がないかなど、普段の様子を注意深く観察してください。異変や症状がみられた際には、すぐに動物病院を受診して治療を行うようにしましょう。

成猫がかかりやすい病気

1歳ごろから、猫がもっとも活発に活動する「成猫期」と呼ばれる時期になります。

この頃になると、膀胱炎や尿石症などの下部尿路疾患(膀胱から尿道までの病気のこと)で病院を訪れるケースが増えてきます。
飲水量が少なくなる冬は、下部尿路疾患が特に増える時期です。日常的に「愛猫のトイレの様子・飲水量・尿量・尿の色」など確認をしてください。もし「トイレに行く頻度が高くなっている・水を飲む量が減っている・尿量が少ない・尿に血が混じっている」などの異変が見られた際には、すぐに動物病院を受診しましょう。

膀胱炎の他、長毛種の猫では、毛が抜け替わる春や秋に毛球を吐き出す「毛球症」などの病気も多いです。

シニア猫がかかりやすい病気

色々な病気にかかりやすくなり、特に腎臓の機能が徐々に低下してしまう「慢性腎臓病」や、代謝が亢進することで食欲が旺盛でも痩せてしまう「甲状腺機能亢進症」、体が血糖値をうまくコントロールできなくなり血糖値が上がりすぎてしまう「糖尿病」にかかっている猫の割合が多くなってきます。糖尿病は肥満の猫で起こりやすく、適正体重を維持することが予防にもつながります。

予防のためにも、愛猫がシニア期の方は特に、かかりつけの動物病院で定期的に健康診断を受けることをおすすめします。

【病気タイプ別】猫がかかりやすい病気について

<ウイルス感染症>

上部気道感染症

猫カリシウイルス および 猫伝染性鼻気管炎ウイルスと呼ばれる「猫ヘルペスウイルス」が原因として知られています。

感染するとくしゃみや鼻水・目やに・食欲低下といった症状が出て、人間の風邪に似ていることから「猫風邪」とも呼ばれています。

感染した猫のくしゃみや鼻水には大量のウイルスが含まれており、感染している猫やその鼻水などに接触すると感染してしまいます。このため、感染している野良猫の鼻水が網戸越しに愛猫に付着するといったケースでの感染もあります。抵抗力の弱い子猫では重症化することもあり、多頭飼育などによるストレスが発症に影響していると考えられています。

猫カリシウイルスと猫伝染性鼻気管炎ウイルスは、混合ワクチンの接種によって発症を予防したり重症化を防ぐことができます。猫の生活スタイルに合わせて、どの混合ワクチンを接種するか獣医師と相談しましょう。

また、他の猫との接触機会を減らすことも予防に繋がります。猫を多頭飼育している場合は、新たにお迎えする猫の混合ワクチン接種がしっかり終わってから先住猫と接触させるようにしましょう。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ“FIV”)

「猫免疫不全ウイルス」の感染により、発症します。
猫の間で広がっており、日本の屋内外飼育猫に関して行われた疫学調査では、約23%もの猫が猫免疫不全ウイルスに感染していたという報告もあるほどです。

感染経路の多くは、感染猫とケンカした際にできる咬み傷によるものです。感染猫の唾液中に含まれるウイルスが傷口から侵入し、感染します。このため屋外で生活しているオス猫に感染が多いことが知られています。そのほかにも、交尾による感染、母猫から子猫への母子感染などもありますが、どちらも非常に稀です。

猫エイズを発症すると、徐々に免疫力が低下します。健康なときにはほぼ害のないような感染力が弱い細菌やウイルスなどにも感染して症状が出てしまう日和見感染を起こしやすくなります。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

「猫白血病ウイルス」の感染により、引き起こされます。

感染経路は、感染猫とのケンカによる咬傷感染、また感染猫とのグルーミングや食器の共有による唾液を介した接触感染、さらに母子感染などもみられます。

子猫が感染した場合は、まだ免疫系が発達していないことが多く、ウイルスが猫の体内に永続的に存在するウイルスの持続感染状態になることが多いです。造血組織のある骨髄に感染が及ぶと貧血・白血病減少など血液に異常を及ぼしたり、白血病・リンパ腫といった血液のがんを引き起こすこともあります。

成猫への感染では、免疫系によりウイルスが排除されることで持続感染状態を免れたり、持続感染状態に陥ったり病気を発症せずに寿命をまっとうすることもあります。

猫汎白血球減少症

感染猫から排出された「猫パルボウイルス」により、引き起こされます。

全年齢の猫が感染しますが、もっともウイルスに感染しやすいのは子猫です。致死率は高く、子猫では90%以上にものぼります。

猫パルボウイルスは、消毒薬や乾燥に対する抵抗力が高く、数ヶ月間環境中に生存することもあります。感染猫の糞便などに排出されたウイルスは、靴・衣服などを介した間接的な接触でも感染するため、室内飼育猫でも感染のリスクがあります。さまざまな病原体と戦う白血球が少なくなることにより、激しい嘔吐・下痢がみられ、重度の脱水状態に陥り死亡することもあります。

猫伝染性腹膜炎

猫腸コロナウイルスが変異を起こして強毒化した「猫伝染性腹膜炎ウイルス」により引き起こされます。

猫腸コロナウイルスは、世界中の猫で確認されており、主な感染経路は糞便や唾液の経口感染によるものです。病原性は弱く、感染しても症状を示さなかったり、軽度の下痢を起こしたりする程度といわれています。

この猫腸コロナウイルスに遺伝子変異が起こり、実際に猫伝染性腹膜炎を発症するのは、感染猫の1割に満たないといわれています。変異の原因の1つとしてストレスが考えられていますが、メカニズムは明らかになっていません。どの年齢でも発症することがありますが、1歳未満で発症すると特に病気の進行が速い傾向があります。

病態は、胸やおなかに水が溜まっていく「ウェットタイプ」と、ブドウ膜炎や神経症状を起こす「ドライタイプ」の2種類に分かれます。どちらも初期症状は発熱や食欲低下などであるため、初期症状だけでは判断が難しいことがあります。

現在、日本で猫伝染性腹膜炎治療に使える承認薬は存在しませんが、治療効果を期待できる様々な物質が見つかっており、研究が進められています。近い将来根治できるようになることが期待されています。

<泌尿器疾患>

尿路結石症(尿石症)

尿路は「尿の通り道」のことです。「腎臓・尿管・膀胱・尿道」の4つから構成され、それぞれの部位に出来た結石を「腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石」と呼び、これら4つの総称が「尿路結石」です。結石の成分によって、それぞれ原因は異なります。

尿路結石の成分として多いのは「ストルバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)結石」です。尿のpHがアルカリ性に傾くと出来やすくなります。食事中の成分が要因となることから、多くのキャットフードメーカーがストルバイト対策を行っており、近年は減少傾向にあります。ストルバイト結石の特徴は、一度形成されても、食事療法によって尿のpH値を正常な範囲である弱酸性に戻すことで溶解することが可能だということです。

対照的に、近年発生率が増加しているのが「シュウ酸カルシウム結石」です。原因は、尿のpHが酸性に傾くことや高カルシウム血症などが原因と考えられていますが、詳細は明らかになっていません。シュウ酸カルシウム結石は、ストルバイト結石と異なり一度形成されると溶解することができません。このため食事療法では対応できず、手術で取り出す必要があります。

こうした尿路結石症への対策として、「猫の水分摂取量を確保すること」が非常に重要です。新鮮な水を常に用意する、ドライフードにウェットフードを混ぜて与えるなど、しっかりと水分を摂れるよう気を配ってください。

慢性腎臓病

慢性腎臓病(CKD)は、シニア猫がもっともかかりやすい病気の一つです。

慢性腎臓病は「3ヶ月以上持続して腎臓の機能が低下している状態」のことを指し、加齢や腎臓に生じる様々な病気が原因となります。猫全体では10%、シニア猫では35%が慢性腎臓病にかかっているといわれています。

慢性腎臓病でダメージを受けた腎臓の組織は、もう元に戻ることはありません。そのため、食事療法・点滴・投薬などの正常な(ダメージを受けていない)腎臓の組織を保護するために治療が生涯にわたって必要になることが多いです。猫だけでなくオーナー様にも、時間的・経済的に大きな負担となる病気です。

<内分泌疾患>

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、代謝が亢進してしまう(※過剰に進むこと)病気です。一般的に中高齢の猫で見られ、特に10歳以上の猫に多くみられます。

基礎代謝が亢進することにより、「食欲旺盛なのに痩せてしまう・落ち着きが無くなり攻撃的になる」などの変化が見られます。また、認知症のせいだと思われがちな「鳴き声が大きくなる・昼夜にかかわらず鳴く・寝る時間が極端に少なくなる」といった行動の変化が生じることもあります。

糖尿病

糖尿病とは、インスリンの量が不足したり十分に働かないため、血液中の糖が増えすぎてしまい、体のあちこちに異常をきたす病気です。

インスリンは血糖値を下げるホルモンで、糖尿病の猫はインスリンが十分に働かないため血糖値が高くなります。血糖値が高い状態が続くと、尿から糖(グルコース)が排泄されるようになり、尿の量とお水を飲む量が増えてしまいます。

猫の糖尿病管理のメインは食事管理で、そこにインスリン治療を組み合わせる形が多いです。糖尿病の療法食は「高タンパク食」「低炭水化物(糖の吸収がおだやかになるように工夫されている)」といった特徴があります。

<腫瘍性疾患>

リンパ腫

猫のがんの中でリンパ腫はもっとも発生率が高く、1,000頭あたり1~2頭発生しているともいわれています。

リンパ腫は体のさまざまな場所で発生し、「胸腺型(縦隔型)リンパ腫」「消化器型リンパ腫」「腎孤立型リンパ腫」「鼻腔型リンパ腫」などのタイプがあります。中でも胸腺型リンパ腫は、猫白血病ウイルス(FeLV)感染との関連が強いとされているため、FeLV感染を予防することが重要です。

治療には外科手術・抗がん剤・放射線治療などを行いますが、血液とともに全身にがん細胞が移動しやすく、外科手術や放射線治療ではがん細胞を除去しきれないので抗がん剤での治療が中心となります。
残念ながら、リンパ腫の予防方法はまだ見つかっていません。リンパ腫の発生率を上げるFeLVに感染させないために、猫を外出させないことが重要となります。もともと屋外での生活が長かった猫など、外出を止めるのが難しい場合などには、FeLVが含まれているワクチン接種を行うようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
これらの疾患に早い段階で対処することは、愛猫の健康を守るために非常に重要です。
・栄養バランスの摂れた食事
・動物病院での定期的な健康診断(血液検査なども含むもの)
・健康状態の日常的なモニタリング など

これらが疾患の早期発見と予防の鍵となります。
愛猫との幸せな生活を守るためにも、猫のことについて理解をより深めて、ケアしていきましょう。

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