こんにちは。レティシアンスタッフのMです。
「猫に木天蓼(またたび)」というフレーズ、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。猫が好むとされるマタタビに例えて、誰かにとっての大好物や効き目が大きいことを意味することわざです。
実際に猫にマタタビをあげると、まるでお酒を飲んで酔っぱらってしまったかのように、体をクネクネさせたり、喉をゴロゴロさせたりする反応が多く見られます。このため、ことわざのとおりマタタビは猫にとって何かしら効き目があると考えられています。
しかし、どうして酔っぱらっているような反応をしてしまうのでしょうか?
また、そもそも猫にとってマタタビはどんな効果や危険性があるのでしょうか?
猫とマタタビの関係について、意外と知らないことも多いと思いますので、今回は猫とマタタビについてお話しさせていただこうと思います。
目次
「マタタビ」とはどんな植物?
マタタビの正式名称は「落葉蔓性木本(らくようつるせいきもと)」と言います。マタタビ科マタタビ属で、「木天寥(もくてんりょう)」や「夏梅(なつうめ)」と呼ばれることもあります。ペットショップなどでは粉末や液体に加工されたものを多く見かけますが、実や枝・葉のままで売られていることもあります。
マタタビを前にすると猫は酔っぱらったようになってしまいますが、他のネコ科動物であるライオンなども同様の反応をすると言われています。特にマタタビに強い反応を示したのが猫だったことから「猫に木天蓼」ということわざが生まれたようです。
なぜ猫はマタタビで酔っぱらっているような反応をするのか?
人間はすでに退化していますが、猫の口蓋の奥(鼻と喉の近く)には「ヤコブソン器官」という、フェロモンを感知する器官が存在します。マタタビの成分に反応するのはこの器官です。脳から中枢神経へと刺激を与え、性的快感と似た感覚が得られるため、興奮状態や酔っぱらってしまったかのような状態になると考えられています。つまり実際にはお酒を飲んで酔っぱらっている状態とは異なります。
マタタビについては解明されていないことがまだまだ多いですが、マタタビに反応するヤコブソン器官はフェロモンを感知する器官のため、メスよりもオスの方が反応しやすいとされています。
また、多くの猫はマタタビに対してなにかしら反応しますが、まったく反応を示さない猫もいます。猫それぞれの感受性の違いによっても反応は異なり、中にはマタタビのニオイでフレーメン反応*をする猫もいます。
*フレーメン反応…フェロモンや臭いに反応して唇を引きあげる生理現象のこと。
詳しくは【猫の身体能力について】のコラムをご参照ください。
マタタビの効果とは?
マタタビには様々な効果があります。猫によって差がありますが、一般的には以下のような効果があるとされています。
ストレス発散や運動不足の解消
マタタビの成分を摂取すると中枢神経が刺激され、一時的に動きが活発になり運動量が増えるため、ストレス発散や運動不足解消につながります。
食欲の促進
食欲が落ちているときにマタタビ入りのごはんやお水をあげると食欲が増すと言われています。しかし、食欲不振は体調不良や病気の可能性もあるため、普段と様子が少しでも異なる場合はかかりつけの獣医師様にご相談ください。
老化防止
猫はごはんを食べるときにあまり咀嚼をしないため、マタタビの枝やマタタビ入りのおもちゃをかじることで脳が刺激され、老化防止や認知症の予防につながると言われています。
新しいおもちゃや家具への順応
猫は警戒心の強い子が多いため、新しいおもちゃや家具をなかなか使用してくれないことも少なくありません。このような場合、新しいおもちゃや家具にマタタビの粉末をかけてみると、マタタビにつられておもちゃなどを使用してくれることもあるようです。
このコラムを執筆中に、我が家で使用している猫の爪とぎのことを思い出しました。爪とぎを新調するたびにマタタビの粉末がついてきていたのですが、ずっと「なぜ爪とぎにマタタビ?」と不思議に思っていたのです。これは早く新しい爪とぎに慣れてもらうためにマタタビの力を借りようということだったのかと理由がわかり、納得しました(笑)
虫よけ
「猫のマタタビ反応(マタタビの葉を噛んだり舐めたり、体をクネクネしたりすること)は、蚊よけの効果がある」という、岩手大学・名古屋大学・英国リバプール大学の共同研究の結果が発表されています。猫がマタタビの葉を噛んだり舐めたりすることでマタタビの葉が傷つき、蚊が苦手な成分が放出されます。それを猫が自分の体にこすりつけることにより蚊よけの効果が出ているのだそうです。
また、日本ではあまり馴染みがないかと思いますが、アメリカやヨーロッパなどではマタタビよりも「キャットニップ」が使用されていることが多いようです。キャットニップはハーブ系の植物で、日本では「イヌハッカ」と呼ばれています。マタタビと似ているため、同様に蚊よけの効果が期待できます。
マタタビの危険性や与え方とは?
マタタビには中枢神経を刺激する作用があります。このため、マタタビを与えすぎると猫が興奮状態になり暴れてしまう可能性や、呼吸困難に陥る可能性が考えられます。猫にマタタビを与える場合は、ニオイを少し嗅がせる程度からゆっくりと始めましょう。また、子猫やシニア猫、基礎疾患のある猫に与えることは避けましょう。
平均体重の成猫の場合、一度に与えるマタタビの量は0.5g程度が適当とされ、マタタビの作用時間は約20~30分と言われています。ただし、マタタビが粉なのか棒なのか、マタタビの形状やタイプによっても適量が異なりますので、必ずパッケージに記載されている用法・用量を守ってご使用ください。
なお、マタタビに毒性はありませんが、連日与えていると耐性ができて効果が薄れてしまうため、マタタビを与える頻度は多くても1週間に2回くらいまでにとどめておきましょう。しつけのご褒美や記念日など、特別なときに与えることをおすすめします。
また、主なマタタビの与え方は、ニオイを嗅がせるか食べ(舐め)させるかですが、形状やタイプによって使い分けられるのでとても便利です。ニオイを嗅がせる方法は、刺激は弱いですが持続性があり、食べ(舐め)させる方法は、刺激が強いですが持続性はないそうです。
マタタビの形状による刺激の強さは「粉末>液体>実>枝」と言われ、他にもスプレータイプやおもちゃタイプなど様々なタイプがあります。運動不足解消や老化防止目的であれば、遊んだりかじったりすることのできる枝タイプやおもちゃタイプを、新しい家具に慣れさせる目的であれば粉末タイプを選ぶなど、用途にあわせて与えてみてください。スプレータイプのマタタビであれば、壁や家具にスプレーすることで猫の気をそらすことができるので、猫同士の喧嘩の仲裁にも役立つと言います。猫それぞれの感受性の違いや好みもあるため、その子にあわせて好みの形状やタイプを探してあげるのも良いと思います。
マタタビの保管方法は?
マタタビは香りが飛んでしまうと効果が弱くなってしまうため、密閉性の高い容器や袋で保管することをおすすめします。
また、マタタビを保管する場所は、猫の手が絶対に届かず、猫だけでは開けられないような場所に保管することが大切です。犬ほどではありませんが、猫の嗅覚も決して侮ってはいけません。ただ隠しているだけではマタタビの香りを嗅ぎつけて取り出してしまう可能性があります。前述したとおり、マタタビの大量摂取は大変危険ですので、保管場所には十分にご注意ください。
まとめ
今回は猫とマタタビについてお話しをさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
用法・用量を守ってマタタビを使用すれば、安全にストレス発散やご褒美などに使用することができるので、困ったときのお助けアイテムとして大活躍しそうだなと思いました。
また、個人的には猫が体をクネクネさせて酔っぱらっているように見えた反応が、実は体を守るための反応だったことに大変驚きました!猫はもともと草むらの茂みなどに隠れて獲物を狙う動物なので、本能的に蚊をよける方法を見つけ出したのでしょうか…。あらためて動物の本能のすごさを感じました。
今後も猫について皆様が気になるようなお話しをさせていただければと思いますので、ぜひまたお付き合いいただけますと幸いです。