毎年、動物病院で愛犬や愛猫に接種している予防注射。何の病気の予防をしているかご存じでしょうか。
今回は、犬と猫に接種する予防注射についてご説明します。
目次
狂犬病予防注射
狂犬病は、「犬」という文字が入っていますが、人間を含むすべての哺乳類に感染する可能性のある病気です。
狂犬病にかかった動物に咬まれることによって、唾液中のウイルスから感染し、神経に沿って脊髄や脳に移動し増殖します。潜伏期間は2週間~2ヶ月ほどといわれています。
症状
前駆期:性格や行動の変化がみられます。
狂躁期:興奮状態に陥ったり、光や音の刺激に対して過敏になります。
麻痺期:歩行不能、よだれが止まらなくなる、昏睡状態に陥り死に至ります。
治療法
現在、有効な治療法はありません。
日本は狂犬病清浄国ではありますが、世界的に見て清浄国指定されている国はごくわずかで、アジアにおいては日本のみとなっています。
ウクライナ避難民の連れてきた愛犬への対応についてのニュースをご覧になった方もいるかと思いますが、世界的には国境をまたぐ動物の移動には厳密な条件があります。狂犬病という病気はそれだけ怖いものなのです。
日本では、狂犬病予防法という法律によって、以下のことが義務付けられています。
・居住している市区町村への飼い犬の登録義務
・年に1回の狂犬病予防注射の義務
・鑑札、注射済票を飼い犬に装着すること
令和4年6月1日から犬猫販売業者等に対し、マイクロチップ装着が義務化されました。
これに伴い、環境省データベースの登録申請を行った場合、居住する市町村が特例制度へ参加していれば、マイクロチップが鑑札の代わりとみなされる制度ができました。(環境省データベースへの登録はオーナー様ご自身で行っていただく必要があります。)
犬の混合ワクチン
混合ワクチンは、狂犬病予防注射のように法律での接種義務はありませんが、犬にとって致死率の高い病気や人間にも感染するおそれのある病気を予防するために接種が推奨されています。
予防できる病気とその症状
(1)犬ジステンパーウイルス
:発熱、元気消失、食欲不振、嘔吐・下痢、鼻汁・目ヤニ、神経症状など
(2)犬アデノウイルスⅠ型(犬伝染性肝炎)
:発熱、元気消失、食欲不振、嘔吐・下痢など
(3)犬パルボウイルス
:嘔吐・下痢、発熱、元気消失、食欲不振、脱水など
(4)犬アデノウイルスⅡ型(犬伝染性喉頭気管炎)
:咳、くしゃみ、元気消失、食欲不振など
(5)犬パラインフルエンザウイルス
:咳、くしゃみ、鼻汁、元気消失、食欲不振など
(6)犬コロナウイルス ※新型コロナウイルス(COVID-19)とは別のウイルスです
:嘔吐・下痢、元気消失、食欲不振など
(7)レプトスピラ(カニコーラ、イクテオヘモラジー、グリッポチフォーサ、ポモナ)
:発熱、脱水、嘔吐、腎不全、肝不全など
(1)ジステンパーウイルス
(2)犬アデノウイルスⅠ型
(3)犬パルボウイルス
(4)犬アデノウイルスⅡ型
の4種類はコアワクチンと呼ばれ、特に感染率や致死率の高い病気となっており、すべての犬に対して接種が推奨されています。
その他のものはノンコアワクチンと呼ばれており、犬のライフスタイルによって接種する内容を判断します。
どのワクチンを接種するかはかかりつけの獣医師様とご相談ください。
猫の混合ワクチン
猫の場合、犬と違い室内飼育で他の猫との直接的な交流がないケースが多いと思われます。
室内飼育の猫でも、オーナー様が屋外で他の猫に触れたり、新たな猫を迎え入れたり、ペットホテルに猫を預ける際に感染リスクは上昇するので、混合ワクチン接種による予防が推奨されています。
予防できる病気とその症状
(1)猫ウイルス性鼻気管炎
:くしゃみ、発熱、下痢、食欲不振など
(2)猫カリシウイルス感染症
:くしゃみ、口内炎など
(3)猫汎白血球減少症
:嘔吐・下痢、発熱など
(4)猫白血病ウイルス感染症
:発熱、食欲不振、貧血、リンパ腫など
(5)猫クラミジア感染症
:結膜炎、流涙、目ヤニ、くしゃみなど
猫では、
(1)猫ウイルス性鼻気管炎
(2)猫カリシウイルス感染症
(3)猫汎白血球減少症
の3種類がコアワクチンと呼ばれており、室内飼育の猫でも接種が推奨されています。
外出する猫にはノンコアワクチンを含めた4種または5種ワクチンの接種を行うことがあります。
まとめ
今回は犬と猫に必要な予防注射について紹介させていただきました。
予防注射は、家族の一員である愛犬・愛猫を病気から守るためにとても大切です。
かかりつけの獣医師様と相談し、定期的な接種をしましょう。