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【取材報告】聴導犬の普及・育成を行う「日本聴導犬推進協会様」~取材vol.1~

2023.10.04

#犬
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こんにちは、レティシアンスタッフのTとAです。

ヨーロッパからペットフードなどを輸入している当店ですが、その際に<品質に問題はないものの、様々な理由でお客様にお届けできない商品>が発生してしまいます。これらの商品は、人と動物の暮らしをサポートする団体様へ寄付させていただいております。

こうした団体様の活動内容を広くお知らせすべく、今回は「日本聴導犬推進協会様」にお話を伺いました。その素晴らしい活動について、少しでも多くの方に知っていただければ幸いです。
また、10月1日は、「身体障害者補助犬法」が執行された日です。補助犬である聴導犬についても日本聴導犬推進協会様の活動と併せて広く認知いただけることを祈っています。

日本聴導犬推進協会様は、埼玉県ふじみ野市の上福岡駅からバスに揺られた緑あふれる中の一軒家で活動されています。事務所の外では、3匹のワンちゃん達が元気にお出迎えしてくれました。どの子も人が大好きなようで、私たちを見つけると尻尾をたくさん振って歓迎してくれました。ワンちゃん達に癒やされていると、取材にご協力いただいた水越みゆき様がお声がけしてくださいました。

水越様は、日本聴導犬推進協会の事務局長を務められていらっしゃいます。とても明るいお人柄で、お話をしていく中で同協会の信念と熱意がしっかりと伝わってきました。

聴導犬を当たり前の社会に

——水越様が所属されている「日本聴導犬推進協会」とはどのような団体ですか?

日本聴導犬推進協会は、動物福祉と障がい福祉を目的とし、聴導犬の「普及」と「育成」を行い、“聴導犬が当たり前の社会になること” を目指しています。

「普及」は、聴導犬の必要性、有効性、社会に理解を深めることを目的としています。学校(小学校や専門学校、大学など)や企業に出向き、講義やPR犬によるデモンストレーションを行いながら、聴導犬を含めたワーキングドッグや障がいについて理解を深めていただき、関心を持つきっかけづくりを行っています。
また、障がいをお持ちの方に聴導犬を提案していく活動も行っています。

次に「育成」というのは、候補犬の導入から、聴導犬を育成し試験が受けられるよう育てるということを行います。

また、去年から新しく「ペットアラートドッグ事業」を始めました。これは人材育成にも繋がると考えている事業です。

——「ペットアラートドッグ」とはどのような取り組みですか?

「ペットアラートドッグ」とは、おうちの中だけで音を知らせてくれる犬のことです。

聴導犬は、身体障害者補助犬法で、盲導犬や介助犬と同じ身体障害者補助犬であると定義されています。そのため、訓練基準や認定基準に沿って訓練や認定を受ける必要があります。
それに比べ、「ペットアラートドッグ」は、おうちの中だけで音に反応するペットです。そのためペット不可住宅での飼育はできませんが、法律上に基づく制限がないので様々なメリットがあります。

まず、聴導犬を利用するにはユーザーさんの年齢制限があり、18歳~60歳までとされています(※2頭目であれば65歳以上でも利用は可能です)。しかし、ペットアラートドッグには、ユーザーさんの年齢制限がありません。このためペットアラートドッグは聴導犬の利用ができなくなってしまったユーザーさんも利用することができます。
また、高齢になった聴導犬が引退となったとしても、そのままペットアラートドッグとなって一緒に生活を続けることができます。

ただし、ペットアラートドッグは、聴導犬としての認定を受けていなかったり、聴導犬自体を引退しているため、屋外で補助を行うことはできません。あくまでも、おうちの中限定です。
また、18歳未満の子どもにも利用できるので、ペットアラートドッグが一緒にいることで聞こえない子どもと聞こえる親の架け橋になることもできるんですよ。

ペットアラートドッグは、もともと65歳を過ぎたユーザーさんのお声から生まれたものでした。ずっと聴導犬を利用してきたが、65歳を過ぎて聴導犬がいなくなってしまうと、今までできていたことができなくなってしまいます。このため「聴導犬まではいかなくても、その不安を補える存在がほしい」といったお声から生まれました。

ユーザーさんの人材育成にも大変役立っていて、聴導犬をお渡しする前の練習として活用されることもあります。また、犬にも「聴導犬には向かなかったけど、ペットアラートドッグの方が向いている」という子がいるんです。キャリアチェンジができることにもなります。

——水越様以外のスタッフさんについて教えてください。仕事の棲み分けなどはありますか?

基本、事務局長である私はなんでもやります。私以外には、

・事務担当が1人:領収書の発行や発送など。近くに住んでいるので週に何回か来る
・広報担当が1人:神奈川にいるが、広報の現場に出るときに来る
・育成担当が1人:神奈川にいるため月に1回来るか来ないか

普段は日常生活が訓練になるので、犬を預けています。訓練士自体は、育成担当と私の2名です。

“24時間犬と一緒にいたい”という想いから訓練士に

——水越様が、聴導犬訓練士になられた経緯を教えてください。

幼いときから犬が大好きで、“24時間犬と一緒にいたい” と思っていて、高校を卒業してからオールドッグセンターで警察犬と家庭犬の訓練について2年間学びました。本当は犬の競技が好きだったので、家庭犬の訓練士になりたかったのですが、オールドッグセンターに就職した際に、「担当がやめるからやってほしい」と依頼されて、仕方なく担当したのがきっかけです。
当時は聴導犬訓練士として確立されていなかったので、最初の頃は「持ち込み」 といって障がい者の方のペットを育てることを行いました。最初はダックスを教えていましたね。特別なことを教えているわけではなく、“家庭犬のしつけ+特別なことをしている” といった認識で行っていました。
また、訓練を行うかわりに、ユーザーさんからは手話を教えてもらいました。その当時はこの協会に入ったばかりだったので、聴覚障がいの知識が全くなく、1から勉強も始めました。
持ち込みと言われるユーザーさんのペットを4頭ほど育てた頃、聴導犬に関する法律ができました。そのタイミングで母校のオールドッグセンターから「アメリカに行って聴導犬について学んできてほしい」と言われ、1ヶ月ほど通訳さん付きで行ってきました。これはとても良い経験になりましたね。
日本に帰国した後は、アメリカで学んだことを活かしながら、現在の協会をつくることになりました。訓練歴は28年になります。

——聴導犬訓練士である水越様のタイムスケジュールを教えてください。

 

5:00 起床・犬の世話(6頭)
7:00 食事・掃除・洗濯
8:30 出勤
AM 犬を外に出す・事務所掃除
洗濯・事務仕事

PM  協会内の事務仕事・メールなどの返信
法人運営業務
17:00 帰社
19:00 食事・掃除・犬の世話
19時以降は家のことなどを行ったり、お風呂に入ったりしていると0時を過ぎています。

 

なお、これはイベントなど何も無いときです。イベントがある日は5時過ぎに家を出ることもあります。
日常生活自体が訓練ですから、訓練のために区切った時間はなく、通常の24時間の生活の中で訓練をしていきます。休みという休みは基本ないですけど、協会に来ないのが休みになるのかな。

聴導犬訓練士になるには、聴覚障がい者への理解が何よりも大切

——訓練士になるためにはどうすればいいのでしょうか?

盲導犬なのか、介助犬なのか、聴導犬なのか? 何の訓練士を目指すかによります。
例えば盲導犬であれば、福祉系の大学を卒業し、そこから盲導犬訓練士の養成学校にいき歩行訓練士になるとか。それぞれの育成団体がどうしているのかによります。

聴導犬の訓練士に関していうと、まずは犬のトレーニングと聴覚障がい者の理解に加え、手話ができないと難しいことが多いです。手話を使える方には手話で対応するので、手話が使えないと思われると、コミュニケーションが取れないと思われてしまう。逆に手話が使えるとわかった瞬間にフレンドリーになってくれる方もいます。壁がなくなる感じですね。
手話を使えることは大切で、手話を学んで初めて聴導犬を渡すためのトレーニングができます。実際、犬のトレーニングだけであれば難しくないと思います。

トレーニングはユーザーさんのために行うものです。私たちが犬に教えたことを、ユーザーさんに変わっても同じことをできるようにするため、ユーザーさんにも犬のトレーニングを教えていかないといけない。そういった部分で、ユーザーさんに犬の扱い方を教えることも難しいところがあります。

当協会の訓練士の募集については、新施設が完成して、スペースが広くなった後に予定しています。
当協会で聴導犬の訓練士になるには、1年間の研修生制度があります。1年間協会に通って犬のトレーニングから聴導犬の普及のことなどをみっちり勉強していきます。基本的にカリキュラムを組みながら、私たちが持っている技術や知識をお伝えしていき、実務を通して行っていきます。
そして1年間の研修制度を終えた段階で、そのまま協会に就職するのか、別の道にいくのか、私たち協会側としては、適正があるのかないのかというところの判断をします。
適正については、犬のトレーニングや人に対する適正(希望者さんを指導する適正)があるのか判断します。適正があると判断したら、次は育成のほうにいくのか、普及のほうにいくのか、新路につくのかといった、もう一つの適正を見ながら判断していく。そういった流れで進めていくようになると思います。

障がいがあってもなくても一人ひとりは違うということを受け入れ、向き合っていくことが大切

——水越様が思う大変なことや困ったことはどういうところですか? 聴覚障がい者の方へのコミュニケーションを取るというのはやはり大変でしょうか。

そうですね。この事業を運営していくためには、聞こえない人たちの対応をしっかりしていく必要があります。“聞こえない” ということを一括りにするのではなく、人それぞれにちゃんと向き合っていく。十人十色と言われるように、障がいがあってもなくても一人ひとりは違うということを受け入れていき、その違いのひとつに “聞こえない” というのがプラスされるだけなんです。そう向き合っていくことをしたいなと思っています。

あとは「犬不足」。適正のある犬がいないのが、どの協会も悩みですね。
動物愛護が進み、センターの持ち込みがかなり減りました。これはとても良いことだと思いますが、条件に合う犬が本当にいない。
候補犬は、雑種の子が主です。昔の雑種は強くて、ほぼ病気もしない子が多かったのですが、その雑種の子が少ない。純血種がどこかで入ってしまうと、遺伝子疾患になったり病気になりやすい体質が増えてしまう。そのため「盲導犬や介助犬になれなかった子を聴導犬にする」などのキャリアチェンジで噛み合わせていくしかないと思いますね。

犬が引退するとき、ユーザーさんと深い繋がりができたか1番わかるんです。

——このお仕事のやりがいや嬉しかったことを教えてください。

私たちがやっていることは、“犬と聞こえない人の橋渡し” なんですよね。あとは、キャリアチェンジ先であれば “キャリアチェンジした先の橋渡し” だと思っています。

社会に対してのやりがいは、聴導犬のことを知ってもらう活動をしているということ、訓練についていうと、犬たちがユーザーさんと活動しているのを見ているとやりがいを感じます。ユーザーさんからも「水越さんは、訓練士をやめたらダメだよ」と言われたり、「次もお願いね」と言われたりすると、必要とされているなと感じて嬉しいです。

あとは、犬が引退するとき、ユーザーさんと深い繋がりができたか1番わかります。
引退した段階で犬が1番良い状態かどうか、作業も10しかできなかったのが20に増えていることを知ったときが嬉しいです。できる作業が増えているというのは、犬がユーザーさんのために働いていた証拠になります。それが次の犬にも引き継がれていく。そこが嬉しい。「やっていて良かったな!」って思います。

あとは、キャリアチェンジ先が一般家庭だと、「世話がすごく楽!」って言われることが多いです。「うちの子いい子なの!」ってどこにいっても自慢してもらえたり、大切にされているのを見るとよかったなって思います。

犬をお渡しするのは信頼関係がないと渡せません。ちなみに協会に来た犬には、お迎えしたときから「協会にはずっといないからね。違う家庭のところに行くんだよ。」ということを伝えています。そのためトライアル期間に犬自身が飼い主を認めないと渡さないこともあります。

あと、ちょうど(取材した日の)一昨日に18歳の子が亡くなったという、最期の連絡が入りました。犬を渡した方たちには、必ずすぐ相談の連絡を貰えるようにしていて、私たちも1年に何回か犬の様子を確認します。最期まで責任は持ちたいので、私たちと連絡が取れる方へ譲渡することが条件でもあります。犬を渡した方で、今まで連絡が取れなくなった方は一人もいません。

2024年12月に新施設が完成予定です

——2024年12月に新施設を建設される予定とのことですが、新施設では今の施設と比べてどういうところが変わりますか?

場所は同じふじみ野市ですが、もう少し駅から近くなります。今の施設は見てのとおり、小さな一軒家でとても狭いんです(笑)

元々、内閣府より「人材育成と犬を増やして欲しい」と言われていましたが、スペースがないのが問題でした。この施設も20年ほど経っており、スタッフと私だけでいっぱいになるほど手狭です。また、体験スペースなどもないので、聴導犬利用の希望者さんに体験してほしいことが1~2個しかできない状態です。ボランティアさんも協会に来てくれるのですが、今はスペースが狭いのでスタッフ自体も集めることができません。

新施設ではスペースが広くて、ボランティアさんやスタッフ自体を増やせるし、色々な人と関わることで今より聞こえない方に寄り添える事業ができると思っています。また、スタッフも犬も安定した環境と安全なスペースが増え、この協会のシンボルとなって欲しいですね。

新しい施設では、研修スペースや体験スペースなどを設ける予定で、聴導犬と暮らしたいと思う人を増やせるといいなと思っています。

——支援物資で足りていないものはありますか?

ペットシーツが欲しいです!
寄付でペットシーツが入ってくると、いつも「やったー!」って思ってます。
実は、多頭飼育崩壊をしていた柴犬の親子を保護していたので、ストックが全部無くなってしまって……。大きくなったので前よりは枚数は減ったけど、子犬を育てるには相当の枚数がいるんです。

【支援のご連絡はこちらから】

一人ひとりに向き合う、それは犬に対しても同じ。

——水越様の今後のビジョンを教えてください。

今後も、変わらずに良質な聴導犬を育てたいです。聞こえない人たちに寄り添った育成ができるように。聴導犬であってもペットアラートであっても変わらない。どっちも同じような形で一人ひとりに向き合う。犬に対しても同じ。性格の違いに合わせて向き合っていきたいです。

——この協会には何頭のワンちゃんが所属していますか?

 

聴導犬の候補犬→3頭
ペットアラートドッグ→1頭
PR犬→2頭
PR候補犬→1頭
キャリアチェンジ3頭

合計10頭です(※2023年4月時点)。

 

最初に事務所の外でお出迎えしてくれた、黒い毛並みに白いソックス柄が特徴の「花ちゃん」は、聴導犬の候補犬なのだそうです。訓練の様子を見せていただけました。

次回のコラムでは、聴導犬についてと、聴導犬の候補犬である花ちゃんの訓練の様子についてご紹介します!

 

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