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【取材報告】聴導犬の候補犬「花ちゃん」の訓練の様子を伺いました~取材vol.3~

こんにちは。レティシアンスタッフのAとTです。

以前、私たちは「日本聴導犬推進協会様」へ取材を行い、その活動内容などをご紹介させていただきました。その際に聴導犬の候補犬 “花ちゃん” と出会い、今後どのように成長していくのか、とても気になっていました。

初めての取材から3ヶ月が経ち、改めて花ちゃんの訓練や成長ぶりについて取材させていただきましたので、その内容をご紹介いたします。

聴導犬候補犬の “花ちゃん” について

花ちゃんの現在の様子は?

【聴導犬の候補犬“花ちゃん”】

【3ヶ月前の花ちゃん】

——お久しぶりです、改めまして本日はよろしくお願いいたします!前回の取材から約3ヶ月経ちましたが、花ちゃんの現在の様子はいかがですか?外見・内面の部分で変わったところがあれば教えてください(前回のvol.2コラム参照)

性格は変わらず明るくてフレンドリーですね。ただ、食への興味が少なく、体格がひょろっとしています。訓練もスタートしたところですが、聴導犬を目指すか、ペットアラートドッグを目指すかで悩んでいます。

 

●「ペットアラートドッグ」とは?
「ペットアラートドッグ」とは、おうちの中だけで音を知らせてくれるペット犬のこと。聴導犬を利用するユーザーさんの年齢制限(18~60歳)外でも利用できる。
(「日本聴導犬推進協会様」取材vol.1コラム参照)

 

この3ヶ月間で大きな変化はありましたか?

——花ちゃんは聴導犬か、ペットアラートドッグかで悩まれていらっしゃるとのことですが、訓練ではどのような様子ですか?

訓練では、こちらの希望する動きを伝えて、教えたことができるようにするのですが、苦手な訓練になると、できないことをごまかすかのように、はじけて乗り切ろうとするとことがあります。あと、ついつい楽しくなってしまいがちなので、常に落ち着いて考えてもらえるように訓練しています。

——なるほど、それがクリアできると次の段階へ進むという感じでしょうか?

そうですね。今の課題がクリア出来たら、また次の訓練をして、またそこで新しい課題がでてきたらクリアしていく、という感じで訓練を重ねていきます。

あとは、「応用が利く」ようにしていきます。例えば、室内から屋外に場所を変えても同じ行動ができるかどうかなども訓練します。

訓練の進捗はいかがでしょうか?

——着々と訓練が進められているようですが、花ちゃんの訓練の進捗や成長具合は、これまでの子と比べていかがですか?

ちょっと精神的に弱いところがあり、そこを強くするための訓練があるので、やや時間がかかっているかなぁ、という感じですね。何でも人を頼って解決しようとするところがあり、人を頼らずとも自分の中で解決してほしい。“かわいい子には旅をさせよ”ではないですけど、「一人で頑張ってみて!」というようにちょっと突き放す感じでやっています。

花の中で解決ができれば、自信に繋がっていくと思うので、何でもかんでもアシストをしてあげるのではなく、ちょっと手助けはするけど、そこから先は自分一人でできるようにして、できたときに褒めてあげて自信に繋げています。

——人の教育・育成と同じようなスタンスですね!花ちゃんにはぜひ乗り越えてほしいです。ちなみに、今は室内だけのトレーニングですか?外でのトレーニングは始めていますか?

はい、一応始めてはいますが、今はまだ通常の散歩コースでやっています。

——お散歩ではどのようなトレーニングをしているのですか?

室内の限られた空間とは違い、外には色々な刺激があるので、その刺激に対して反応を“する”とか“しない”とかの様子を見ながら、「何に反応するのか?」というところを確認していくっていう感じですね。確認しながら「これは何だろう!?」って驚いたり思ったりしたことを、疑問に思ったままで終わらせないようにしています。

——車とか自転車とかでしょうか?

車とか自転車はわりと普段から見ていて、すでに認識しているので対応できるのですが、突発的に起こったことなどにはびっくりしていますね。

例えば、近くに病院があるのですが、車いすに乗った人がポンと出てきて、驚いてしまったことがあります。そんなときも「あれは人」と教えて認識させていくことが大事。杖をついた人も、車いすに乗った人も、何をするにも「みんなあれは人」って言います。二足歩行する人だけが人ではないよ、ということを教えます。

車にしても、大きな音がする車だったり、電気自動車のように全然音がしない車だったりと多種あるので、どんな状況になってもどんな場面でも、それは車で、それは人でという風に考えられるようにしていきます。

私一人だけだと、なかなかそれができないこともあるんですけど、それを例えば先輩犬の“ひまわり(PR犬)”と一緒にやることで解決できることもあります。

【PR犬“ひまわりちゃん”】

——先輩犬と一緒にいるから安心するのでしょうか?

そのとおりです。特に自信がない子は、このように他の犬を取り入れています。また、逆にベテランの子がダメで、どうしようと思うこともあるんですけど、若い犬がカバーすることもあったりします。

ただ、「お互いがお互いを頼りすぎないように」ということも重要で、“一緒にいるから大丈夫”というところだけを求めないようにしていかないといけないんですね。例えば、一番最初にベテランの子についてきてもらって安心感を与える…というのはいいと思うんですけど、それをずっとやってしまうと、ベテランの子がいないとできなくなってしまいます。お互いしっかり距離感を保って付かず離れずの状態で、互いにカバーしながらやっていくことができればいいかなと思っています。

聴導犬に重要なのは “まず気づくこと”

——お散歩中のそういった刺激に“慣れる”というところが、今の花ちゃんのメインのトレーニングでしょうか?

はい。今はまだ、元気いっぱいで周りが見えていないという状態で(笑)

「花? いま見てないよね? 今の気づいてないよね?『それにいつ気づくんだろう?』って私は思っているんだよ?」という具合で言い聞かせているところです。

聞こえない人たちは、聴導犬の動きを見て判断するところもあるんですよね。聴導犬が何かを見ていたとき、「見ていた先のものは何なんだろう?」って聞こえない人が気づいていくんです。気づきすぎて何でも情報を拾いすぎても困るんですけど、聴導犬の中で、“反応すべきもの、反応しなくていいもの”の判断は後からついてくるものだと思うので、まずは何に対しても気づいてもらわないと聴導犬としては難しいんですよね。

【左/ひまわりちゃん・右/花ちゃん】

——気づいてからの取捨選択ということですね!

そうなんです。気づきすぎてもダメだし、気づかなすぎてもダメなんで難しいところなんですけど…(笑)

例えばひまわり(PR犬)の場合だと、刺激に強いのは良いことなんですけど、あまりにも情報を拾えなさ過ぎて、音のことを教えてもぼーっとしちゃうところがあるんです。外でいろは(ペットアラートドッグ)と一緒に歩いているときに、いろはは後ろを振り向いたりすることがあって、私たちが「なんだろう?」って振り向いたら車や自転車が来ていた、そんなことが度々あったんですけど、ひまわりは気づかないんです。食べ物の匂いにはすぐ気づくのに!(笑)

——なるほど、音の訓練をしても生活中に気がつかなかったら聴導犬のお仕事は難しいですね…。さらに都会だともっと音が多いので聞き取る情報が増えるとなると、そこから取捨選択するのは難易度が高くなります。(※ペットアラートドッグのいろはちゃんについては、後ほどご紹介させていただきます)

——と、なると花ちゃんのお散歩トレーニングはもうちょっと続きそうな感じですか?

そうですね。見て・聞いて、どう対応していくか。その訓練が落ち着いたら、次のパブリックに出ていきます。もっともっと人がいっぱいいるような、普通の犬たちが入れない駅の構内に行ってみるとか、お散歩から徐々に段階を踏んでいきます。そこまでもっていけるだけの精神的な図太さとかも一緒に成長させている状態ではありますね。

——次の段階に進むうえで年齢のリミットはありますか?

だいたい1歳半くらいまでです。

——パンフレットやHPに記載されている「スマホの音を教える」などの、トレーニングは行っていますか?

【タイマーが鳴るところへ行く花ちゃん】

音のトレーニングの延長線上に「スマホの音を教える」というのがあります。

私たちの中ではタイマーの音を基本にしているんですが、それに対して探しに行って・伝えて・連れていく、という一連の動作ができるようになったら、音の種類を変えて行っています。

現在、花は「音が鳴ったところへ行く」という、一番初期段階の訓練をしています。鳴ったら良いこと(おやつがもらえる)があるという感じで、トレーニングをしているので、犬にとっては美味しい訓練ですね(笑)

ただ、あんまり食べ物に興味のない子なので、慣れたフードやおやつでないと食べてくれないんです。そういうところがあるので、冒頭でもお話ししましたが、ひょろっとしているんですよね。もう少し太ってほしいと思い、フードを増やしているんですけど、ある一定の量から食べないで残してしまいます(笑)

がんばれ、花ちゃん♪

花ちゃんについて、いろいろお伺いさせていただきありがとうございます。訪問時も、スタッフと元気いっぱいに挨拶もできて、本当にフレンドリーな花ちゃんが私たちも大好きです。訓練は大変だけど聴導犬・ペットアラートドッグになれるのを応援しています!がんばれ、花ちゃん!

ペットアラートドッグ “いろはちゃん” について

【ペットアラートドッグ第1号を目指す“いろはちゃん”】

ペットアラートドッグの訓練とは?

——続いて、ペットアラートドッグのいろはちゃんについて教えてください。

いろはは、現在3歳(2023年09月時点)になる女の子です。

生後2ヶ月ほどで協会にやってきました。トレーニング歴は2年半ぐらいかな。

——いろはちゃんは、なぜ「聴導犬」ではなく「ペットアラートドッグ」が向いていると判断されたのでしょうか?

いろはは、感情をすべて声に出してしまうんです。自分の気持ちがついつい口に出ちゃうんですよね。聴導犬は吠えないことが前提なので、口に出てしまうとなるとやはり難しいかと思いました。

ただ性格は本当にいい子で、人に寄り添っていくのがとても上手な子です。そのため、ペットアラートドッグがまさに適任だと判断しました。

——なるほど。ペットアラートドッグを希望される方は多いですか?

そうですね。お問い合わせなどは、たくさんいただいていますが、ペットを飼える環境ではなかったり、もっと小さい子が良いという希望があったり、なかなかお渡しに結びつかないケースもあります。

いろはの体重は10kgあるのですが、希望者さんはもっと小さい子を希望されている方が多いようです。お仕事上は、10kgぐらいがちょうど良い大きさではあるんですけどね。

——あまりに小さすぎるとペットアラートとしてできることが限られてしまうので難しいですよね。では、いろはちゃんは条件さえ合えばいつでもデビューできるんですね!

はい!できたらペットアラートドッグとして1号になってほしいと思っています。

すぐにお渡しではなく、ユーザーさんが決まったら合同訓練をしてデビューになります。

物ではないので、取り扱い説明書とかではなく、きちんと合同訓練を一緒にしてデビューとなります。

——デビューすることになり、協会からいなくなったら寂しくなりませんか?

いろはには、「協会にはずっといないよ!」と来たときから言っているので、情は移さないようにしています。「やっとデビューできるのか!」って思うかも(笑)

——ペットアラートドッグと聴導犬では、トレーニングの違いはありますか?

人と一緒に暮らしていくためのトレーニングは共通して行いますが、ペットアラートドッグは、おうちの中だけのお仕事なので、電車に乗ったり、公共施設での外でのトレーニングの必要はありません。

聴導犬のトレーニングは、外での行動管理が難しく、聴導犬としてルールを守るのが大変なので、外でのトレーニングには時間がかかります。

それに比べ、ペットアラートドッグの合同訓練はおうちの中だけで済むため、聴導犬の訓練よりは短いです。だいたい、聴導犬のトレーニングの3分の1くらいの時間で終わりますね。数字でいうと、50時間くらいかな。1日2時間行うので、25日で済みます。

——ペットアラートドッグの候補生は、いろはちゃん以外いますか?

以前にお話した、多頭飼育崩壊から保護した柴犬の子が挑戦中です!

——ペットアラートドッグ2号として頑張ってデビューしてほしいですね!

インタビューをしたあと、水越様がいろはちゃんを連れてきてくださいました。

取材スタッフ一人ひとりの足元に順番にご挨拶に来てくれて、少し照れ気味ながらもその様子から人が大好きなことが伝わってきました。

ご挨拶が済んだ後は、早速ペットアラートの基本トレーニングの様子を披露してくださいました。

ペットアラートの基本トレーニングの様子

 

1 アラームが鳴っている場所にまずは行く。
2 アラームが鳴っていることを振り返って人に知らせる。
3 アラームが鳴っているところまで人を連れていく。

 

1つ1つのアクションが上手くできれば、ご褒美や声がけによって、その行動が合っていることを伝えていきます。この積み重ねによって「音がなった場所に人を連れて行く」ということを覚え、場所や状況が変わっても同じことができるように訓練を行うことで、聞こえない方の支えになっていきます。

取材を終えて

いかがでしたでしょうか。

今回の取材でも、改めて聴導犬やペットアラートドッグの素晴らしさを実感することができました。聴導犬についての素晴らしい取り組みに、スタッフ一同感動いたしました!

ご協力いただいた、日本聴導犬推進協会様には本当に感謝しかありません。

今後もフードの寄付をとおし、日本聴導犬推進協会様をサポートさせていただきたいと思います。また、このコラムが聴導犬・ペットアラートドッグの認知拡大のお役に立てれば幸いです。

 

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