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【取材報告】ハイドロセラピー施設見学~取材vol.1~

こんにちは、レティシアンスタッフのMとSです。

以前、こちらのコラム(【愛犬のリハビリ】~注目されるハイドロセラピーについて~)で「ハイドロセラピー」についてご紹介させていただきました。

そして今回、より深くハイドロセラピーについて知るために、ハイドロセラピー施設がある学校法人ヤマザキ学園併設の「コンパニオン・アニマル・センター」内「アニマル・メディカル・センター」にて取材・体験をさせていただきました。

まずは取材させていただいた内容をインタビュー形式でご紹介します。

公式ページより

「アニマル・メディカル・センター」でのハイドロセラピーについて

 

ハイドロセラピーとは?
水の持っている力と特性を最大限に利用して、犬の「体」と「心」を癒し整える、もっとも効果的な水治療法のこと。理学療法に基づき、水の力を借りてプールやスパ、その他の専門機材(水中トレッドミルなど)を用いて行う、体の矯正や水中トレーニング施術。これらを総称して「ハイドロセラピー」と言う。

 

“効果がみられるのは2~3ヶ月後!
応援するとトレーニングを頑張ってくれるワンちゃんが多いので、賑やかに楽しく行うことがポイントです”

——ハイドロセラピーの設備を取り入れた経緯などを教えてください。
学生の実習でも使用するので、教育の一環として導入しました。

——ハイドロセラピーを利用するワンちゃんたちはどのようなきっかけで来院されるのでしょうか?
獣医師同士のつながり・紹介や、主治医から「リハビリをしてもいいよ」といった内容の診断書をお持ちのオーナー様が、リハビリのできる施設をお調べになっていらっしゃいます。
木曜日の限られた時間に担当の獣医師と愛玩動物看護師がリハビリを行っています。

——どのようなお悩みや症状(疾患)、ご相談が多いですか?
椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼、股関節形成不全の術後の機能回復などが主です。最近はダイエットを目的にいらっしゃることもあります。

——施術を受けた・受けている犬種や年齢について教えてください。
渋谷にある病院という地域性なのか、小型犬が多いです。また、「これから先の長い犬生を豊かにしてあげたい」と思われるためか、比較的若いワンちゃんが多い印象です。

——手術後の機能回復のためのリハビリを目的としているワンちゃんと、手術をせずに症状改善を目的とされるワンちゃんはどちらが多いですか?
整形的なことでトレッドミルを試したいというワンちゃんに関しては、基本的には手術後のリハビリのワンちゃんが多いです。

——ハイドロセラピーと他のどんな治療法を組み合わせることが多いですか?
準備運動としてマッサージ、曲げ伸ばしなどのストレッチ、症状に合わせてバランスディスクの使用、鍼灸、レーザーなど、様々な治療法を組み合わせています。

——平均的な頻度・期間・1回あたりの施術時間など教えてください。
スパンは、個体にもよりますが、効果がみられるのは2~3ヶ月後です。週2回で通っていただくことが理想です。しかし症状やオーナー様のご都合、費用などの兼ね合いもあると思うので、必ずではありません。オーナー様と話し合いながら決定しています。
トレーニングは、1回あたり1~2分走ってもらうセットを合計6回くらい行い、濡れた体を乾かす時間を含めると1時間くらいはかかります。

——向き不向きがあると思いますが、どういった基準で判断をされるのでしょうか? カウンセリング時に向いていないと判断した場合は、他の治療法をご提案されるのでしょうか?
水中トレッドミルは下から水が出てくるので、水に恐怖心があるワンちゃんはもちろんですが、閉鎖的な空間に入ることが苦手なワンちゃん、濡れた体を乾かすので、シャンプーやドライヤーが苦手なワンちゃんなどにはストレスになってしまう可能性があります。
プールとは異なり地面を歩かせるので、動くことに恐怖心があるワンちゃんについても、オーナー様がどんなに熱心でもおすすめできません。向いていないと判断したワンちゃんは陸上でできるリハビリ・トレーニングや鍼灸に切り替えます。

——1頭に対して、セラピストの人数はどのくらいでしょうか?
最低2人で行います。小型犬の場合、1人が中に入り歩行をサポートして、もう1人は外で機械の操作をします。
また、基本的に学校の実習生が見学に来ているので、実習生に声をかけて応援をしてもらいます。応援するとトレーニングを頑張ってくれるワンちゃんが多いのですよ。賑やかに楽しく行うことがポイントです。

“オーナー様が一番ワンちゃんのことをわかっていると思うので、ちょっとした変化を感じた時点から始めるといいと思います!”

——健康な時期に施術を受けることもあるのでしょうか?
私たち人間がジムに通ってトレーニングするようなイメージです。
オーナー様が「運動をさせたい」と思われた際にいらしていただけるといいと思います。

——シニアの運動機能改善を目的とする場合、どのような行動や状態になった際にハイドロセラピーをおすすめされますか?
オーナー様が一番ワンちゃんのことをわかっていると思うので、日常生活で「最近、散歩中に元気がないな」「歩き方がいつもと違うな」など、ちょっとした変化を感じた時点から始めるといいと思います。特に開始する年齢などに決まりはありません。

“私たち人間がプールに入れるかどうかの基準と一緒で、調子がいいときでないとおすすめできません”

——ハイドロセラピーのマイナス面や施術中の注意点などはありますか?
水を使用するので「乾かさないといけない」という点が最大のマイナスです。乾かすのに時間や人手がいるので、ワンちゃんの拘束時間が長くなったり費用が発生したりしてしまいます。

——施術が行えない病気などはありますか?
外傷がある・皮膚病がある・消化器疾患がある、心疾患・呼吸器疾患などで重症な場合は適用外です。また、私たち人間がプールに入れるかどうかの基準と一緒で、調子がいいときでないとおすすめできません。かかりつけ医と当院の専門医と両者で判断しています。一方がOKでももう一方がNGという判断の場合、行うことができません。

“プールでのトレーニングとはまた異なり、水中トレッドミルでは日常で歩いているときに使用している筋肉を強化したり、可動域を広げたりすることを目的に使用しています”

 

水中トレッドミル(ウォータートレッドミル)とは?
プールとウォーキングマシーンを組み合わせたようなトレーニングを行う水中歩行器のこと。

 

公式ページより

——水中トレッドミルは体重制限やサイズ制限などはありますか?
体重制限はありません。水中トレッドミルに入るサイズであれば問題ありません。

——「アニマル・メディカル・センター」での水温設定を教えてください。
28℃~30℃くらいです。

——なぜその温度に設定されているのしょうか?
運動をするのに温度が高いと暑くなってしまうし、冷たいと力が入ってリラックスできないので、28℃~30℃くらいがちょうどいいのかなと思っています。私たち人間がプールに入るときと同じ感覚です。

——体格や症状によって水量や速さを調節しているのでしょうか? 平均的にはどのくらいの水量と速さで行われるのでしょうか?
個体によりますが、だいたいサイズごとに基準があり、そこから様子をみて調節していきます。1、2など速さ調節ができるようになっています。

——陸上ではあまり使わない筋肉の使用率が高まると聞きました、具体的にはどこの筋肉のことでしょうか?
プールで泳ぐ場合は “いつも使っていない筋肉” を使うため、そうした筋肉が強化されますが、水中トレッドミルは日常で歩いているときに使用している筋肉を強化したり、可動域を広げたりすることを目的に使用します。水量を調節することで負荷を調節することはできますが、プールでのトレーニングとはまた異なると思います。

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<取材メモ>
水を使用するトレッドミルでのトレーニングなので、プールと同じ効果があると思っていましたが、目的が少し異なるのだとか。症状や状態によってそれらを使い分けられているということも初めて知りました。「アニマル・メディカル・センター」にはプール設備がないので、トレッドミルを使用したトレーニングをメインに、陸上でできるリハビリ・トレーニングや鍼灸と組み合わせて施術されているそうです。
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「ハイドロセラピスト」という職業について

“動物の体のことをもっと知りたい、勉強したいと思う人、水に入ることが好きな人はなれるのではないかなと思います”

——特定の資格をもっていなくても働けますか?
これから “リハビリ設備のある動物病院” で働きたいということであれば「愛玩動物看護師」の資格は必要だと思います。また知識として、筋肉・骨格・神経について詳しくないといけないでしょう。

——ハイドロセラピーを行う施設で働くにはどうすればいいのでしょうか?
施設によって基準が設けられていると思いますが、当院でリハビリを担当する場合は、ヤマザキ学園で取得可能な「ケーナイン・リハビリテーション・セラピスト(NPO法人 日本動物衛生看護師協会(JAHTA)認定 民間資格)」の取得が必須です。

——私もハイドロセラピストになれますか?
興味とやる気があって、動物の体のことをもっと知りたい、勉強したいと思う人、水に入ることが好きな人はなれるのではないかなと思います。

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<取材メモ>
こうしてお話しを伺った際にも、『「ハイドロセラピスト」という呼び名はあまり聞かない』とおっしゃられていましたので、まだ獣医師・愛玩動物看護師などのような一般的な職種ではないようです。
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取材を終えて

ハイドロセラピーについて興味を持って調べ始めるまでは、「ハイドロセラピーは特定の症状やトラブルがあってから行うものだ」と思っていました。しかし、“私たち人間がジムに通うような感覚で試すことができる” とのことでしたので、水が好きなワンちゃんには特におすすめです!
まだまだハイドロセラピーを取り入れた施設は少ないですが、ワンちゃんオーナー様からのニーズが高まるにつれて施設も増え、ハイドロセラピーの認知度も高くなっていくのではないかと思いました。

次回は、我が家の犬に水中トレッドミルを使用させていただいた体験レポートをお届けする予定です。

今回の取材協力
コンパニオン・アニマル・センター(CAC)
〒150-0046東京都渋谷区松濤2-3-10
高柳獣医師・有谷愛玩動物看護師

 

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