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【取材報告】「聴導犬」の訓練は?適した性格は?日本聴導犬推進協会様にお話を伺いました~取材vol.2~

こんにちは。レティシアンスタッフのAです。

今回のコラムでは、前回に引き続き「日本聴導犬推進協会様」の取材内容をご紹介させていただきます。
取材の際にはとても貴重なお話をお伺いし(お忙しいところ、ありがとうございました!)、1回ではご紹介しきれなかったため、続編を執筆させていただきました。

前回は主に「訓練士さん」についてのご紹介でしたが、今回は「聴導犬」に焦点をあてた内容となっております。ぜひ前回のコラムとあわせてご覧いただき、聴導犬の素晴らしさを知っていただけたら幸いです。

「聴導犬」について

インタビュー内容のご紹介の前に、まずは「聴導犬」が具体的にどのようなお仕事をしているのかをご説明します。

私たちの日常生活の中にはたくさんの音があり、その音から様々な情報を得ています。聴導犬は、必要な音の情報を色々な動作を使って耳の不自由な方に知らせることで生活をサポートしています。

 

・メール/FAXの着信を知らせる
・ドアのインターホン/ドアのノックを知らせる
・目覚まし時計の音を知らせる
・呼び鈴の音を知らせる
・警報機の音を知らせる
・赤ちゃんの泣き声を知らせる
・キッチンタイマー/電子レンジ/洗濯機の音を知らせる
・やかんの笛の音を知らせる

 

など、聴導犬はこれだけの音を聞き分けて、サポートができるのだとか。驚くほどの幅広さです。
ここまでできるようになるまでの訓練(トレーニング)は、きっととても大変でしょう。
今回も、日本聴導犬推進協会 事務局長の水越様に詳しくお話を伺っています。

聴導犬ってどうやったらなれるのでしょうか?

——訓練士さんと聴導犬候補のワンちゃんの二人三脚で訓練をしているとお伺いしました。「日常生活自体が訓練である」とのことでしたが、まず聴導犬として適性があるワンちゃんはどういった子ですか?(前回のvol.1コラム参照)

性格的な面で言いますと、こういったところを見ています。

 

【1】人と一緒にいたい・人と離れたくないかどうか
【2】人と何かをすることが苦にならないか
【3】人とのコミュニケーションが良好か

 

雑種の子の方が病気に強いので、犬種については雑種の子がいいですね。ただ、以前に比べ雑種の子が少なくなった印象です。

——なるほど、性格に関してはやはり人に友好的な子が向いているのですね。では、そういった候補犬のワンちゃんはどういったところからお迎えをしていらっしゃるのですか?

行政の施設や愛護団体の施設、ほじょ犬育成の団体などから声がかかります。そのあと、実際にワンちゃんを見に行き、適性があるかを見ます。

——“適性があるかを見る” ということは、すべてのワンちゃんが聴導犬の候補犬になれるわけではないということでしょうか?

そのとおりです。やはり適性があるかどうかが大事なので、必ず私たちの目でワンちゃんを見ます。声がかかって見に行っても、ワンちゃん10頭のうち、適正のある子は1~2頭くらいでしょうか。さらに、センターの人たちも厳しく適正を見ているので、なかなか私たちに声がかかるまで至らないときもあります。

——そんなにシビアなんですね。“人の生活のサポートができるワンちゃんを育てる” ということは、それだけ大きな責任もあり、とても大変なことなのだと改めて実感しました。

候補犬のワンちゃんの訓練を教えてください

——適性があると認められて候補犬となったワンちゃんは、一体どのような訓練をしているのでしょうか?例えば、【音(携帯電話など)が鳴ったら知らせる】というケースではどのような訓練を行うのでしょうか?

音に関しては、「音が鳴ったらそれを探す」ということができるように訓練をします。最初は、おやつをもらえるなど「音が鳴ったら良いことがある」ということを繰り返します。そして、徐々に音が鳴るものをいろいろな場所に置いて音を探せるようにします。これができたら、最終的にまたおやつなどを使って「音が鳴るもののところに人を連れていくといいことがある」と覚えてもらいます。そうやって訓練していくことで【音が鳴ったら知らせる】という行動ができるようになります。

——いきなり音を知らせる訓練をするのではなく、徐々にステップアップして最終着地点なんですね。携帯電話の着信を知らせることができるようになるまででも、とても道のりが長くて驚きです。

1年間でどれくらいデビューしますか?

——そのような訓練を行って、1年間でどれくらいのワンちゃんが聴導犬デビューできるのでしょうか?また、合格比率はどのくらいでしょうか?

現在は3年に1頭くらいです、希望としては1年に1頭は出したいところですね。合格できるのは、全体の2.5~3割ぐらいです。

——厳しい狭き門ですね!聴導犬になるのには本当に大変なんですね。

聴導犬になれなかったワンちゃんの進路を教えてください

——訓練はしたものの、聴導犬になるには難しいという判断に至った子もいますよね。そういったワンちゃんについてはどのような進路があるのでしょうか?

まずは、ペットアラートドッグ(前回のvol.1コラム参照)になれる可能性があります。これは去年から導入しましたが、本当に良かった!

おうちの中では聴導犬のお仕事ができるのに、大勢の人がいる場所や外出先だと聴導犬のお仕事をすることが難しいといった子がいるんです。この子たちは、聴導犬として外でのお仕事はできませんが、せっかく音を知らせるということができるのに、ペットとしてお渡しするのにはもったいないなと思っていました。
外での補助はできませんが、聴導犬とまでは言わないけど、おうちの中限定で補助が欲しいといった希望者様がいらっしゃるので、そういった方にお貸ししています。

他には、PR犬ですね(前回のvol.1コラム参照)。学校や企業へ行きPR犬によるデモンストレーションを行いながら、「聴導犬はこういうお仕事をしています」という紹介をするワンちゃんです。あとは、一般家庭にお渡しすることもあります。

聴導犬としてデビューするまでのコストは?

——日常生活や訓練、また認定試験の合格まで長い道のりかと思います。認定試験で合格し聴導犬になるまでにどのくらいのコストがかかっていますか?

たぶん300万円くらいかかっているかと思います。あとは、ここ(協会)から、聴導犬の利用希望者さんのおうちまでの距離にもよってきますね。希望者さんが決まった後の訓練は、その希望者さんのご自宅やご自宅付近で訓練をするため、遠いとその分だけ交通費がかかってきます。

合同訓練とは?

——聴導犬の利用希望者さんが決まったあとの訓練は、その希望者さんと一緒に行うのですね!

そうです。希望者さんと、私たちが訓練をした候補犬がペアになって、私たちから訓練を受けていただきます。これを「合同訓練」と言います。
候補犬たちは私たちが訓練をしているので、ある程度は出来上がっています。ただ、持つ人が変わるとタイミングが合わなくなってしまうことがあるんです。なので、希望者さんは聴導犬を利用するにあたって、“どこを気にしなくてはいけないか” と “犬の扱い方” を私たちから教わる。そして候補犬には “今まで私たちにやってきたことを希望者さんにやるのよ” ということを教えていく。合同訓練ではこうしたことを行っています。

——なるほど!希望者さんと候補犬が一緒に生活ができるように、お互いに訓練するのですね。ちなみに、合同訓練の期間や日数は設けられていますか?

法律では10日以上と決められているのですが、私たちは最低でも30日くらいかけています。時間で言うと150時間くらい合同訓練に費やしています。訓練も連日続けてやるパターンだけではなく、希望者さんのお仕事の都合などもあるので、週末だけ訓練をしたり、大型連休を使って訓練をしたりなど、詰込み型で訓練をするときもあります。その時々でやり方は変わってきます。

聴導犬利用希望者さんと候補犬の相性は?

——踏み込んだ質問になるのですが…、利用者さんと候補犬の相性が悪いなと感じたことはありますか?

これまででは、一度もないですね。犬も人も評価をしてマッチングさせるので相性が悪いペアにはならないようにしています。

その中で「とくに良かった!」と思うペアがいました。そのペアは、犬が凄くまじめな子で、利用者さんがふわふわしていらっしゃる方でした(笑)
聴導犬の利用にあたっては、法律的な面もあるので、適当だったり曖昧だったりしてはいけないときがあります。出かけた先などで何か問題が起きたときに解決できないといけないので、“ユーザー・利用者” としてしっかりしていないといけない。なので、このケースではまじめな犬をお渡しして、犬に利用者さんを教育してもらうようにしました。これが、本当に上手くいきました!

——どのように上手くいったのですか?

ある日、利用者さんから「犬がこうなんだけど…。」という聴導犬の行動について相談がきました。話を伺ったところ、利用者さんの行動が良くありませんでした。犬がそういうことをやめてほしいから怒っているので、行動を改めてほしいと伝えました。
それはどういった行動だったのかというと、「犬一匹分スペースを空けて行動をしていなかった」のです。どうしても、聞こえない人からすると自分の範囲内で行動を考えてしまいがちなので、犬のスペースまで範囲を広げることが最初は難しいんです。犬がちゃんと教わったとおりに聴導犬のお仕事をしたいのに、自分のスペースを空けてくれないものだからとっても怒っていました。「この立ち位置・このスペースでね、と教わったのに、どうしてあなたはしてくれないの!」という感じでした(笑)
本当にまじめな犬だったから「こうしてね?」と教えたことは絶対に忘れない子だったので、この子にはとても感謝しています。

その方に次の聴導犬をお渡ししたときは、ちょっとマイペースな子だったので、「昔の自分みたい!昔の私はこうだったのか!」と言っていました。利用者さんが犬のことを考えてくれるようになったので、マイペースな犬でも安心してお渡しできました。最初からふわふわでマイペースなコンビでしたら大変だったなと思います。

——素敵なペアになれたエピソード、大変興味深かったです!他の素敵なペアのお話も伺ってみたいですが、お時間の都合上、本日はここまでですね。いつか機会があればぜひ!

現在訓練をしている候補犬について教えてください

——聴導犬についてとても理解が深まりました。聴導犬の候補犬の子がいらっしゃるとのことですが、もしよろしければその子についてもお話を伺えますか?(前回のvol.1コラム参照)

もちろんです!(※実際に候補犬の子を連れてきてくださいました※)
名前は、「花」といいます。11/22生まれ5ヶ月の女の子です(※取材日4月時点の月齢)。今は人と生活していく段階を教えていて、環境が変化しても自分を落ち着かせ、リカバーしていけるように育てています。連れてきたのは3ヶ月弱のときで、訓練歴は2ヶ月程度です。

——レティシアンスタッフのTにぴったりくっついてますね(笑)

とにかく人が大好きな子です!

——「人と一緒にいたい・人と離れたくない」聴導犬に向いている子の性格にぴったりな子ですね!

そうですね、性格も向いていますが、今まで見てきた犬の中で成長スピードが速く、毎週体重が増えていくので大きくなりそうという点も期待しています。

花ちゃんはまだ音を覚える訓練はしていませんでしたが、水越様の反応を見ながら、左右どちらに動いて「おすわり」や「ふせ」をして待機すればいいのかを、自分で考えて自主的に行動をしていました。

私が犬を飼っていたときは、犬のおすわりなどは私の指示で行っていたので、「ワーキングドッグはちゃんと自分で考えて行動ができるんだ!」と驚きました。花ちゃんがもっと訓練が進んだときにどんな成長を遂げているのか、とても楽しみですね。

花ちゃんの成長について、改めて取材可能とのことなので、数ヶ月後に再びお邪魔させてていただく予定です。花ちゃんの成長や訓練についてもご紹介させていただきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!

 

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