こんにちは。レティシアンスタッフのAです。
以前、こちらで書いた「【ペットの口腔ケア】「歯周病」の予防・治療方法について」の回は、おかげさまでご好評をいただきました。その続編として、日常生活の口腔ケア「歯みがき(ブラッシング)」についてご紹介いたしますので、今回もどうぞお付き合いください。
ワンちゃんやネコちゃんは、やはり歯みがきが苦手な子が多いものです。
「歯みがきをしたくても嫌がられてしまい、いつも断念してしまう……。」というオーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、ワンちゃんもネコちゃんも、人間よりも歯石が付きやすいため、歯みがきを怠ると歯周病になるリスクが高まります。さらに、歯周病が悪化すると内臓の疾患に繋がることもあるのです。
そんな危険からワンちゃんやネコちゃんを守るために、歯周病の予防効果が高い歯みがきは、ぜひ習慣化したい口腔ケアとなります。オーナー様はぜひ歯みがき(ブラッシング)をマスターして口腔内の健康を保ってあげてください。
目次
歯ブラシの選び方について
歯みがきをする上でかかせない「歯ブラシ」ですが、どんなものを選べばいいのでしょうか?
どこでも手に入る人間用の歯ブラシは、ワンちゃんやネコちゃんにはヘッドが大きく、毛先も硬すぎます。必ずペット用の歯ブラシでブラッシングするようにしましょう。
①歯ブラシの破損による誤食が起こる可能性もあるため、折れにくい素材のものを選ぶ
②歯ブラシの毛先が柔らかいものを選ぶ
③お口の大きさやマズルの長さにより、ブラシのサイズ・持ち手の長短を選ぶ
例)お口が小さい子:小さいブラシ / マズルが短い子:短い持ち手
他にも、360度ブラシがついているタイプ、歯ブラシのヘッドが小さいタイプなどがあります。これらは歯の内側までブラッシングしやすく、歯周ポケットに入りやすいなど様々な利点があります。用途にあわせて歯ブラシは何本か所持していると良いかもしれませんね。
歯みがき(ブラッシング)に慣れる方法について
実際に歯ブラシを使って磨く前に、まずは歯みがきに慣れる練習から始めてみましょう。
初めから歯ブラシを使ってブラッシングしようとすると、嫌がられてしまう可能性があります。「歯みがき=嫌なこと」という悪いイメージになってしまうと、習慣化することが難しくなりますので、焦らずワンちゃんやネコちゃんのペースで始めましょう。
また、歯周病が進行していると、口腔内に痛みを感じたり出血を伴ったりすることもあります。練習を頑なに拒否する場合は一度、獣医師様に診ていただくと良いかもしれません。「歯肉が赤い・腫れている・下がっている、出血する」などの症状がみられる場合は、歯周炎の治療を優先すべきでしょう。
ステップ1. お口を触られることに慣れる
お口の周りを優しく触ってみます。難しそうであれば、フードやおやつで気を引きながら触れてみましょう。触ることができたら「褒める・撫でる・おやつをあげる」などして、「お口を触られること=良いこと」というイメージをつけます。
これが口腔ケアの第一歩であると同時に、もっとも重要なステップとなります。時間をかけてゆっくり慣れさせてあげましょう。
ステップ2. 唇・歯茎・歯に触る
お口の周りを触れるようになれば、唇→歯茎→歯の順で少しずつ触れる箇所を増やしていきます。難しそうであれば、おやつで気を引いたり、ペット用の歯みがきペースト(※)を使ったりすると嫌がりにくいです。こちらも触ることができたら「褒める・撫でる・おやつをあげる」などをして良いイメージをつけていきます。
(※歯みがきペースト:歯ブラシにつけて磨いたり、なめさせたりすることにより口腔ケアの効果があるもの)
ステップ3. 指にガーゼを巻いて優しく歯を拭く
ガーゼを指に巻いて、犬歯→前歯→奥歯の順で少しずつ拭いていきます。この場合も、いきなりすべての歯を拭くのではなく、徐々に拭ける箇所を増やしていきましょう。誤食の恐れがありますので、ガーゼは丈夫なものを選び、しっかりと指に巻きましょう。
また、ガーゼではなく犬猫用のデンタルシートを使うのも有効です。歯石の形成を抑えるポリリン酸ナトリウム等が含まれているものを使うと、物理的な歯垢除去の効果があります。
歯みがきに慣れる練習は以上です。
どのステップも無理せず短時間で済ませ、嫌がってしまったら別の日にチャレンジしてください。また、別のことに興味を示しているときに練習をしてもワンちゃんやネコちゃんの気が散ってしまうので、遊んだ後やお散歩から帰ってきて落ち着いてからなど、タイミングにも注意が必要です。焦らずゆっくり練習していきましょう。
歯ブラシを用いた歯みがき(ブラッシング)の方法について
ここまでのステップをクリアしたら、いよいよ歯みがき(ブラッシング)デビューです。これまでの練習を踏まえて根気よく、ワンちゃんやネコちゃんのペースにあわせて始めましょう。
ステップ1. 歯ブラシを見せる
まずは「歯ブラシ」自体を好きになってもらいます。私たちが歯ブラシを使ってブラッシングするのはごく自然なことですが、ワンちゃんやネコちゃんからすると「口の中に異物を入れられた!」と思ってしまうかもしれません。
そこで、効果的なのは「歯ブラシを見せる」→「フードやおやつなどご褒美をあげる」という手順を繰り返すことです。根気よく続けることで、歯ブラシをみると自然に「ご褒美がもらえる!」「美味しいものが食べられる!」と。歯ブラシ自体に良いイメージがつきます。
ステップ2. 歯ブラシを歯にあてる
最初は歯を磨こうとせず、歯ブラシをあてるだけで十分です。このとき歯ブラシを濡らしておくと、毛先が柔らかくなるのでオススメです。「歯ブラシを歯にあてる」→「フードやおやつなどご褒美をあげる」を繰り返し、歯ブラシをあてても痛くない・怖くないということを覚えてもらいましょう。
ステップ3. 歯みがき(ブラッシング)をする
歯ブラシに歯みがきペーストをつけて、実際に磨きます。歯周ポケットの汚れをかき出すように45度程度の角度をつけて行いましょう。磨く力が強すぎると歯肉退縮の原因となってしまうため、毛先が軽くしなる程度の力加減がベストです。
ペーストが美味しいので嫌がりにくいですが、ワンちゃんやネコちゃんが頭を引いて拒否をしたらすぐにやめるようにしましょう。また、歯ブラシにペーストが完全になくなった状態で磨いていると、ストレスになってしまいますので、歯みがきに慣れるまではペーストがなくなった場合もすぐにやめたほうが良いでしょう。
また、歯みがきをしている最中は、無言ではなく「いい子だね」「えらいね」など、褒めながら磨くと怖がらず安心してくれます。
歯の内側は特に磨くのが難しいですが、ボールなどを咥えさせておくとお口を開けたまま磨くことができるのでやりやすいかと思います。歯磨きペーストがついてしまうかもしれないので、水洗いができるタイプのボールが良いですね。
歯みがきのステップは以上です。
放置した歯垢は、約2~3日で歯石になってしまうそうです。そのため、歯みがきの頻度は3日に1回以上、可能であれば毎日が理想です。また、歯みがきガムや飲み水にまぜるサプリメント等の併用も有効です。ただし、これらは歯周ポケットに対しては効果がないため、ブラッシングとセットで使用すると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。歯みがきをマスターするまでは、いろんなステップがあって大変かと思います。
「まだ若いから大丈夫!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、色々な物事を受け入れやすい子犬・子猫のうちから歯みがきのトレーニングを開始しておくと良いですね。
短時間の練習をコツコツ行っていくことで、オーナー様もワンちゃん・ネコちゃんも、ストレスなく続けられるかと思います。
また、ネコちゃんはワンちゃんと比べると歯みがきが難しいので、獣医師様と相談のもと口腔ケアに取り組んでみるのも良いかもしれません。
このコラムをご参考にしていただいて、ぜひ大切なワンちゃん・ネコちゃんの口腔ケアに取り組んでみてください!