こんにちは。レティシアンスタッフのTです。
ワンちゃんたちは人よりも歳をとるスピードが早く、「人間の1年は1歳以降の大型犬にとって7年に相当する」といわれています。獣医療の進歩により犬も猫も寿命が延びていますし、いつまでも元気でいてほしいものですが、愛犬や愛猫にも必ず “老い” がやってきます。愛犬や愛猫の “介護” について、あらかじめ心構えをしておく必要があるでしょう。
私自身も豆柴を飼っていました。愛犬が元気で若いうちは「この子が老いる」ということが具体的に想像できませんでした。雑誌やSNSで見るシニア犬ケアの記事は流し読みするだけで、どこかで「まだ自分の愛犬には関係ない」と思っていました。ところが愛犬がシニア期に入ったある日、足腰が弱って立てなくなった姿を目の当たりにしました。その瞬間、「もっと早く介護についての情報を集めて勉強すればよかった」と強く後悔したことを、今でも鮮明に覚えています。
私の愛犬は、約5年前に老衰で虹の橋を渡りました。年齢は17歳2ヶ月で、15歳から立つこともできなくなり、2年ほど要介護の状態になりました。愛犬の最期は、自宅で家族全員揃って看取ることができたので、私の中では理想的な最期を迎えられたと思っています。それでも「シニア犬の介護について、もう少し早く知っていれば良かったな」という思いもありますので、私の体験も踏まえながらお話しさせていただきます。
目次
介護をするうえでの心構え
ワンちゃんの介護を体験したことがある方はご実感されていると思いますが、想像以上に大変でした。
特に私の愛犬は、獣医師様より認知症も発症していると診断されており、2時間ごとに夜泣きをしていました。睡眠も削られ、精神的にも体力的にも厳しかったです。介護をするのは一人では難しい場合もあると思います。そんなときは無理せずご家族やプロの力も借りることをおすすめします。
また、ワンちゃんやネコちゃんの認知症がひどい場合には、内科治療もあるそうです。程度によってサプリメントやお薬なども処方してもらえるようですので、かかりつけの獣医師様にご相談いただくと良いでしょう。
私自身は、愛犬の介護が始まったころ、若いワンちゃんを見るのが辛い時期がありました。元気にボールで遊んでいるワンちゃんを見て、「うちの愛犬も昔はあんな風に走っていたのになぁ……」と、どうしても気分が落ち込んでしまいました。
でも、いつからかこう考え直せるようになったのです。
「介護は大変だけど、今まで愛犬は私たちに楽しい思い出をくれたんだ。これからその恩返しをしよう。お別れが来てしまったときに、愛犬に “ここのおうちにきて幸せだった” と思ってもらえるように頑張ろう!」と思うようになり、それからは少し気が楽になりました。
“最期まで看取る” ということは、ペットオーナーとしての責任でもあり義務だと思います。すべてに悲観的になる必要はないですし、「今ある残りわずかな時間を一緒に楽しむことが最優先だ」という気づきが重要なのだと思います。
ワンちゃんの介護に必要なものは
ペットショップに行くと、様々な介護用品が並んでいます。種類が多すぎて迷ってしまいますが、ここでは私が介護をしていたときによく使っていた介護用品をピックアップしてご紹介します。
シリンジ
愛犬が寝たきりになってしまった場合、食事介助をしなければなりません。そのときに活用するのが「シリンジ」と呼ばれる針のない注射器です。サイズも豊富なので、大きさ・太さはワンちゃんの口の大きさや食べる量にあわせて選んでください。また長く使っていると先端が傷むこともあり、怪我の原因になりかねません。複数持っておくことをおすすめします。
おむつやマナーベルト
加齢で筋力が衰えてくると、排泄を司る筋肉も衰えます。おもらしをすることがありますので、常におむつをつけておくことになるでしょう。肌が弱いワンちゃんだと、おむつで蒸れて肌荒れを起こしてしまうことがありますので、布製のマナーベルトもおすすめです。
シニア犬用ハーネス
背中に取手がついているタイプのハーネスです。取手を持ってサポートしてあげればまだ立てる、という状態の時に役立ちます。ハーネスを使って立つことができれば軽いお散歩やトイレ介助もできますし、寝たきりになっても、床ずれ防止に寝返りを打たせることができます。これはとても役立ちました。
バスタオルやブランケット
バスタオルは、食事介助のときに口が汚れてしまったりフードをこぼしたりするため必需品でした。また、介護が必要な状態だと、自分では体温調節が難しくなります。夏でもバスタオルやブランケットを使用し、愛犬の体温を調節してあげてください。さらに、寝たきりの状態になると、床が硬いと床ずれを起こしやすくなります。バスタオルやブランケットを複数枚敷くことをおすすめします。
ワンちゃんの食事介助について
愛犬が固形食を食べにくくなり、自力で噛んで飲み込めない場合は「流動食」を与えることになります。
流動食の作り方
ドライフードを人肌程度のぬるま湯にひたしてふやかし、ミキサーにかけてペースト状にします。
※ドライフードをふやかすときは、熱湯だと栄養素を損なう恐れがあるため避けましょう。
※ぬるま湯の量にも注意が必要です。多すぎると与える量が増えてしまい、愛犬の負担になる場合があります。逆にぬるま湯が少なすぎるとペーストが固くなり、シリンジにつまってしまいます。様子を見ながら調整してください。
流動食の与え方
続いて、簡単な「食事介助」についてご紹介します。
必ずワンちゃんの体調に合わせて行ってください。難しいと感じた場合や愛犬の体調が思わしくない場合は、必ず獣医師様にご相談ください。
1 上体を起こして頭の位置を高くする
誤嚥を防ぐため、頭の位置は高めにしてあげてください。このときに顎だけを上に向けると気管に入りやすくなるので注意が必要です。丸めたクッションなどを頭や体の下にいれて高さを出してあげることもおすすめです。
2 シリンジを用いて食事を流し込む
ふやかしたフードをシリンジに詰めます。愛犬の犬歯の後ろ側から優しくシリンジを差し入れ、一口分をゆっくりと流し込みます。
勢いよく入れてしまうと口から溢れてしまうので、少量をゆっくりと入れることがポイントです。
3 口に含んだら喉を優しくさすり、飲み込めたことを確認する
2~3を繰り返し行い、短い時間で効率よく与えることが重要です。与える頻度は1日数回にわけて行うといいでしょう。また、流動食であっても、必ずお水を合間に飲ませながら与えましょう。お水を飲むことで食事を胃に流しこむことを助け、口内の食べかすもきれいにできます。
床ずれ予防について
寝たきりの状態が続くと、自分の体重が同じ場所にかかり続けることで血行が悪くなります。ひどくなると皮膚が壊死してしまうことがあるそうです。床ずれを予防するためにも、適度な「寝返り」をさせてあげましょう。床ずれ予防マットやクッションなども市販されていますので、これらを使用することもおすすめです。
また、圧迫を軽減すること以上に大切なのは “清潔を保つこと” です。排泄で体が汚れてしまった場合はすぐに優しく拭き取り、洗い流さないドライシャンプーや濡れタオルなどで体を適度に拭いてあげましょう。
寝返りの打たせ方について
2~6時間に1回程度を目安に、寝返りをさせてあげましょう。特に体が大きいワンちゃんの場合は、大きければ大きいほど寝返りの間隔は短くしてあげたほうが良いそうです。
寝返りを行うときは、必ず愛犬を抱き上げて上体を起こしてから、反対側を向かせるようにします。背中を軸にした寝返りは、内臓に負担がかかり、食べ物が逆流してしまう危険があるため絶対にやめましょう。
まとめ
老化がすすむと、耳が遠くなったり目が見えにくくなったりと感覚が衰えます。愛犬自身も今までできていたことができなくなるため、精神的にもとても不安定になります。そうした不安を少しでも取り除いてあげられるように、おおらかな気持ちをもって、愛犬を毎日たくさん撫でて、たくさんの優しい言葉をかけてあげてください。
私自身も愛犬が介護状態になってから、お別れがいつきても後悔しないよう、毎日たくさん話しかけながら感謝を伝えていました。
少しでも介護の知識を持っていると、心に余裕が生まれ、愛犬に寄り添い支えてあげることができると思います。縁があって家族になった愛犬が「ここのおうちの子になれて本当に良かった!」と最期に思ってもらえたらとても幸せですよね!このコラムが少しでも皆様のお役に立てることを祈っています。