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《獣医師コラム》痒みや涙やけの原因かも?犬の食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎


今回は、「犬の食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎」についてご紹介したいと思います。
ワンちゃんの「痒み」や「涙やけ」は、もしかしたら食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎の兆候かもしれません。

 

犬の食物アレルギーとは

「犬の食物アレルギー」は、その名のとおり食べ物をアレルゲン(原因)とするアレルギーで、食べ物や食品添加物に対する過剰な反応のことをいい、「犬アトピー性皮膚炎」との併発が多いことが知られています。

即時型と遅延型があり、主に遅延型が約8割に関連しているといわれています。罹患した犬の約30~50%が1歳以下で発症しています。

 

食物アレルギーの原因


主要な食物アレルゲンとして、肉類(牛、豚、鳥)、卵、牛乳、穀類(大豆、小麦)などが挙げられます。
IgE抗体やリンパ球を介した免疫反応が関与していると考えられていますが、病態としてはいまだに不明な点が多くあります。

 

食物アレルギーになりやすい犬種


柴犬、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ミニチュア・シュナウザー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど

 

食物アレルギーの主な症状

食物アレルギーには季節性がなく、1年中症状がみられます。
主な症状としては、顔面・背中・肛門まわり・指の間に、皮膚の痒みや発疹などが出ることが挙げられます。
こうした皮膚症状のほか、下痢や嘔吐、便回数の増加(1日3回以上)などの消化器症状を伴うこともあります。
また、目の周りに症状が出ると結膜炎を引き起こし、涙の量が増えて涙やけを伴うことがあります。

 

食物アレルギーの診断方法

食物アレルギーの診断には、「除去食試験」または「血液検査」が行われます。
除去食試験は、アレルゲンとなるものを実質含まないごはんを食べさせることで、痒みの原因が食事によるものかどうかを判定する試験です。
血液検査は、リンパ球が反応する食物を検出することが出来る「リンパ球反応検査」とIgE(免疫グロブリンの一種)が反応する食物を検出することが出来る「アレルゲン特異的IgE検査」の2種類があり、どちらも原因となるアレルゲンを特定するために用いられます。

 

食物アレルギーの治療

食物アレルギーの基本的な治療は、原因となる食物抗原(アレルゲン)を避けることです。
マラセチア皮膚炎や表在性膿皮症などの併発疾患がある場合には、適切な抗菌剤、抗真菌薬またはシャンプーなどを用いて治療を行います。
アトピー性皮膚炎を併発していなければ、適切な食事管理で良好な予後が期待できます。

犬アトピー性皮膚炎とは

「犬アトピー性皮膚炎」は、遺伝的な背景を有したアレルギー性皮膚疾患です。

体質として表皮のバリア機能が弱いことが挙げられ、ほとんどの症例が6ヶ月~3歳齢の時期に初発します。

 

犬アトピー性皮膚炎の原因


植物や花粉、室内ダニ、昆虫の死骸、カビなどが主なアレルゲンとしてあります。
原因となる環境アレルゲンと接触しやすい環境(散歩コースなど)、生活環境の不適切な温度や湿度・ストレスのかかる環境で症状が悪化することがあります。

 

犬アトピー性皮膚炎になりやすい犬種


柴犬、シー・ズー、パグ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、ミニチュア・シュナウザー、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ヨークシャー・テリアなど

 

犬アトピー性皮膚炎の主な症状

原因となるアレルゲンの種類にもよりますが、症状が季節ごとに変化することがあります。
環境のアレルゲンに対してIgEが関与することで皮膚が炎症を起こし、痒みを伴う皮膚症状が現れます。
耳や顔、指の間、脇の下、おなか周り、内股の付け根などを中心に慢性の皮膚症状がみられます。

 

犬アトピー性皮膚炎の診断方法

犬アトピー性皮膚炎は、病態に基づいた客観的診断法が確立されていないことから、その他の痒みを伴う皮膚疾患(外部寄生虫、細菌および真菌感染症、食物アレルギー)を除外することで診断されます。
リンパ球反応検査やアレルゲン特異的IgE検査などの血液検査、皮膚にアレルギーの原因と考えられる物質を少しずつ注射しアレルギー反応がみられるか検査する「皮内検査」なども、原因となるアレルゲンの推測に用いられます。
犬アトピー性皮膚炎の診断基準として、以下のような指標が挙げられます。

・3歳以下で発症する

・室内飼育である

・ステロイド剤で痒みが軽減する

・皮膚病変を伴わない痒みがある

・前肢に皮膚病変がある

・耳介に皮膚病変がある

・耳の辺縁に皮膚病変がない

・腰背部に皮膚病変がない

 

犬アトピー性皮膚炎の治療

生活環境の整備
原因となるアレルゲン(花粉など)を回避出来るのであれば、生活環境を整えましょう。例として散歩コースの変更や空気清浄機の設置などが挙げられます。

薬物療法
薬物療法(外用薬、内服薬、注射薬)では、ステロイド剤、シクロスポリン剤、抗ヒスタミン剤、インターフェロン剤などが用いられます。
減感作療法は、アレルゲンを特定し、それを逆に体内に少しずつ注射していく治療法です。アレルゲンを少しずつ注射することによって体に抗原を慣らしていき、アレルギー反応を起こらなくするという治療法で、体質を変える根治的な治療として期待が寄せられています。

スキンケア(洗浄と保湿)
犬アトピー性皮膚炎の治療において、皮膚の洗浄は環境アレルゲンの除去や常在菌管理に、皮膚の保湿は、皮膚バリア機能改善に効果的な方法です。
獣医師様と相談して、愛犬の肌に合ったシャンプーや保湿剤を使用しましょう。

 

犬の食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎の予防法と注意するポイント

犬の食物アレルギーを予防するには、アレルゲンになりにくいタンパク源を用いた食事や栄養素がバランス良く含まれている食事を取ることで、体内の免疫バランスを整えることが大切です。
フードやおやつ以外にも、動物由来ゼラチンを使ったカプセル剤や乳酸菌製剤などのサプリメント、デンタルガムや歯磨きペーストなどの歯科ケア用品、チュアブルタイプの寄生虫駆虫薬など、見落としがちなものが原因となることもあるので注意が必要です。

犬アトピー性皮膚炎は、遺伝的な背景からくる体質が根本的な原因であるため、予防するための薬やフードはありません。大事なのは、洗浄によって肌を清潔に保ち、保湿を行うことで皮膚のバリア機能を補助することです。
また、食物アレルギーを併発することが多くあるため、愛犬に皮膚の痒みや皮膚トラブルがみられたら、まずはかかりつけの獣医師様に相談しましょう。

まとめ

犬の食物アレルギーは、原因となるアレルゲンを抜いた食事を行うことにより、高い確率で良化する傾向にあります。
犬アトピー性皮膚炎は、皮膚の洗浄と保湿によって肌の健康を保つことが大事です。
それぞれ併発しやすく、目の周りに症状が出ると涙やけなどの症状につながることもあるため、愛犬に痒みや脱毛、皮膚の赤みがみられたら、早めにかかりつけの獣医師様に相談しましょう。

 

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