• Twitter
  • FaceBook
  • instagram
  • LINE

《獣医師コラム》ネコちゃんの多頭飼い

こんにちは、レティシアン専属獣医師の I です。

ネコちゃんオーナー様の多くは、きっと「ネコちゃんをもう1頭、お迎えしてみようかな?」と考えられたことがあるのではないでしょうか?

「仕事で家を留守にしている間、1頭でのお留守番はかわいそう。」
「多頭飼いの予定はなかったけれど、運命的な出会いをしてしまった!」
など、様々な理由から多頭飼いに踏み切る方が多いようです。

ネコちゃんという癒しの存在が増えるため、多頭飼いはオーナー様がよりハッピーになれるかもしれません。

ネコちゃんたちにとっても様々なメリットがありますが、ネコちゃんは本来、単独行動をする習性があるため、多頭飼いによっていくつかのデメリットが生じてしまう可能性もあります。

今回は、そんなネコちゃんの多頭飼いについて、メリット・デメリット、そして注意点を含めてお話しします。ご自宅に複数のネコちゃんがいる方、今後新しいネコちゃんのお迎えをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

多頭飼いのメリットは?

お留守番のさみしさが軽減される

ネコちゃんは基本的に単独での行動を好みます。しかし、中にはさみしがりやでオーナー様に依存してしまうような性格の子もおり、そういった子は、人でのお留守番にストレスを感じてしまいます。
多頭飼いをすることで、こうしたストレスが軽減されることがあります。

遊び相手ができ運動量UP

室内飼いのネコちゃんは、外飼いや野良のネコちゃんと比べると、どうしても運動量が不足しがちです。
その点、多頭飼いの環境であれば、オーナー様がかまってあげられないときも遊び相手がいるので、自然と運動量が増えて肥満の防止にもつながります。
また、日中にたくさん遊ぶことで夜の大運動会を防ぎ、オーナー様の負担も軽減されるかもしれません。

 社会性を学習できる

多頭飼いすることで、他のネコちゃんとの距離感や接し方、力の加減などを学習することができます。
特に、子猫のうちからこのような社会性を身に付けることで、他のネコちゃんや人間への接し方が身に付き、いい関係を保っていくことができます。

多頭飼いのデメリットは?

ストレスの原因になる

新しいネコちゃんをお迎えしてしばらくは、お互いに緊張してしまいストレスを感じてしまう可能性があります。
また、ネコちゃん同士の性格が合わない場合は、ストレスが長期化してしまいます。体調まで影響がおよんでしまうこともありますので注意が必要です。

ストレスによる症状とは、以下のようなものがあげられます。

・食欲不振
ストレスや疲労で一時的に食欲が低下することがあります。ネコちゃんは食べない状態が1日以上続くと、肝臓に負担がかかり、重篤な病気を併発してしまうリスクもあります。

・性格の変化
今まで穏やかだった子でも、オーナー様に対して攻撃的になってしまったり、臆病になって部屋の隅から出てこなくなってしまったり、性格に変化がみられることがあります。

・脱毛
ストレスが原因となって、過剰に体をなめたり、毛をむしったりする行動がみられることがあります。ひどい場合はそれが原因で皮膚炎になってしまうケースもあります。
これらの症状がみられた場合は、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

病気の発見が遅れてしまう

多頭飼いでネコちゃんが複数いるとなると、下痢や吐き痕を見つけた場合でも、どの子が体調を崩しているのか判断しにくくなり、病気の発見が遅れてしまうことがあります。慣れるまでは注意して観察するようにしましょう。
また、トイレ周りにペットカメラを付けたり、ペットカメラ付きトイレを置いたりと、記録しておくことが対策にもつながります。

費用面の負担が増える

飼育する頭数が増えれば増えるほど、やはり費用も多くかかるようになります。経済的にも問題がないか、事前にしっかりシミュレーションしておく必要があります。
私が動物病院で働いていた際にも、「2頭同時に体調を崩して、検査・治療費用が高額になる」といったケースはよくみられました。こうした想定外の出費が生じたときにも対応できるよう、しっかりと準備しておきましょう。

多頭飼育の際に気をつけたいこと

飼育スペースは十分か?

ネコちゃんは、自分のパーソナルスペースを必要とします。そのため、ネコちゃんの飼育頭数の上限は「部屋数-1までが適切と言われています。
ただ、そこまでの部屋数を確保するのが難しいことも多いでしょう。この場合は、ネコちゃん同士の距離が保てるスペースや隠れ場所があるか、そこへたどり着ける安全な経路が確保できるかを、あらかじめ確認しておきましょう。

トイレの数に不足はないか?

トイレの数は、一般的に「猫の頭数+1個以上」と言われています。
ネコちゃんはトイレの臭いにとても敏感できれい好きなので、自分以外が入ったトイレでは排尿・排泄したがらないことも。常にトイレをきれいな状態に保ち、トイレを我慢するネコちゃんがいないように気を付けることが重要です。
また、ネコちゃんによって好みのトイレ・砂のタイプが異なるので、それぞれの子に合ったトイレ選びも必要になってきます。
ストレスなくトイレができる環境を作ることは、「特発性膀胱炎」などの泌尿器疾患の予防にもつながります。

 「特発性膀胱炎」とは?
ストレスが原因で発症する泌尿器疾患で、ネコちゃんの排尿トラブルの半数以上はこの特発性膀胱炎が占めていると言われています。
症状としては「おしっこが出にくい」「血が混じる」「粗相をしてしまう」などがあげられます。
これらの症状は1週間程度で治まることもありますが、ストレスのかかった状態が続くと、症状を繰り返しやすくなったり、他の病気の原因となってしまったりする可能性もあるため注意が必要です。

 食事の与え方にも配慮を

ネコちゃんはそれぞれ食べるスピードや食べ方が違います。先に食べ終わった子がもう1頭のごはんを食べてしまうこともありますし、1頭が残したごはんをもう1頭が食べてしまうこともあります。
食事の様子を毎回観察するのは難しいと思いますが、こういった行動が続くと明らかに体型が変わってきます。
対策としては、それぞれのネコちゃんごとに食事場所や時間を分ける、食べ終わったネコちゃんを隔離するなど行ってみるといいでしょう。

 去勢・避妊手術の実施

オスとメスの組み合わせで飼育する場合、子猫を望まないのであれば、繁殖防止のため去勢・避妊手術は必須です。
ネコちゃんは交尾するとほぼ確実に妊娠する「交尾排卵」という特徴をもつ動物で、一度の妊娠で48頭の子猫が生まれます。
そのため、去勢・避妊手術を行わず無計画に多頭飼いを始めると、あっという間に子猫が数十頭に増えてしまい適切にお世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」を引き起こしてしまう可能性が高まります。
また、オス同士・メス同士での多頭飼いであっても、マウントの防止や、発情によるストレス防止の対策にもつながります。

 予防接種の実施

ネコちゃんの感染症を予防することが目的です。
新入りのネコちゃんから先住ネコちゃんへ、ウイルス感染してしまうケースも少なくありません。特に子猫やシニア猫は、感染したときに症状が重くなり、命に関わるリスクもあります。
室内飼いでも、オーナー様が外出した際、手や服についたウイルスから感染する恐れもあるので予防接種を受ける必要があります。
ワクチンにはいくつか種類があり、それぞれ予防できる病気や価格も変わってきます。またワクチンには副作用もあるため、ネコちゃんの健康状態をみて、接種する適切な時期なども含め、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

新しいネコちゃんの迎え方

準備しておきたいもの

・隔離できる部屋または隠れることができるスペースの確保
・キャットタワーなど高さの違う休息場所
・食器、水入れ
・ケージ
・新しいトイレ など
 
上記以外にも、ネコちゃんが早く落ち着くことができるように、猫のフェロモン製剤の使用や爪とぎなど、発散できる場所を設置しておくのも効果的かもしれません。

対面の手順は?

①新入りネコちゃんの行動制限
最初は別々の部屋で数日過ごし、先住ネコちゃんの気配やニオイに慣れてもらいます。

② お互いのニオイを交換する
まず、相手のニオイが付いたタオルなどをもう一方のネコちゃんのそばに置きます。そのニオイを嗅いですぐにその場から立ち去ってしまうようなら、あまり歓迎ムードとは言えないでしょう。
次に、ニオイがある場所での食事反応を観察しましょう。相手のニオイが付いたものがある中でも、動じずにごはんを食べてくれるようなら、いよいよ対面に進みましょう。

③初対面
初対面は、ケージ越しであいさつから行いましょう。
その後、オーナー様立ち合いのもとで直接対面し、威嚇などがなければ、対面の時間を徐々に延ばしていきます。
こういった方法で少しずつステップを踏んでいくのが望ましいでしょう。

トライアルで相性の確認

ネコちゃんの場合、ずっと一緒にいることで次第に慣れてくる……というものではありません。可能であれば、お迎えする前にトライアル期間を設けて、先住ネコちゃんとの相性を確認するようにしましょう。
トライアル可のペットショップやブリーダーは少ないですが、保護施設ならトライアル可能なところも多いので、そういった施設で探してみるのもいいかもしれません。

 

より注意が必要な組み合わせ

・成猫(オス)×成猫(オス)
オスは縄張り意識が強いので喧嘩になってしまうケースがあります。
・シニア猫×子猫
子猫の活発さに、シニア猫がストレスを感じてしまうケースがあります。

 

ただ、これらに当てはまるからといって必ずしも相性が悪いわけではありませんので、実際に対面して判断することが必要です。

先住ネコちゃんのケアも

先住ネコちゃんは「オーナー様を取られた」という気持ちになってしまい、新入りネコちゃんを攻撃するケースもあります。
心配のあまり新入りネコちゃんを気遣いがちですが、友好な関係を築けるよう、可能な限り先住ネコちゃんを優先するようにしましょう。

 ・名前を呼ぶときは先住ネコちゃんから呼ぶ
・スキンシップを優先して行う
・喧嘩をしたときは先住ネコちゃんの味方になる など

 こうした点に気を付けるといいでしょう。

まとめ

ここまでネコちゃんの多頭飼いについてのメリットやデメリット、お迎えする際の注意点などお話ししてきました。
ペットフード協会が行った調査によると、2017年からネコちゃんの飼育頭数はワンちゃんを上回り、平均飼育頭数も「1.74頭」と増加傾向にあるそうです。
ネコちゃんたちがじゃれあっている姿などは見ているだけで幸せな気持ちにさせてくれますから、その魅力に惹かれて多頭飼いをしたくなるオーナー様が多いのかもしれませんね!
今後、新しくネコちゃんをお迎えする予定のあるオーナー様は、まずは先住ネコちゃんのことを第一に考えてあげてください。そのうえで、今回のコラムの内容をご参考にしていただければと思います。

この記事をシェアする
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE