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《獣医師コラム》【野良猫を保護したら?】お迎えのときの注意点、先住猫との関係など

2023.09.20

#猫
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こんにちは、レティシアン専属獣医師のYです。

突然ですが、皆さんのおうちのまわりで「野良猫」を見かけることはありますか?
現代の日本では、野良犬に出会うことはほとんどありませんが、野良猫についてはまだまだ見かける機会もあるのではないでしょうか。

私が動物病院で勤務していたときには、偶然野良猫を見つけ、保護することになった方も数多くいらっしゃいました。しかし、実際に野良猫を保護した場合にどのように対応すべきか、お迎えするときにどんな点に気を付けるべきかなど、分からない方も多いでしょう。

今回は、野良猫を「保護したときに必要なこと」と「お迎えするときの注意点」についてご紹介します。

野良猫を保護したときに必要なこと

※保護した野良猫が、「ふらふらしている・体が冷たい・ぐったりしている」など、
健康状態に問題がありそうに見えた場合は、いち早く動物病院を受診してください。

まずは本当に野良猫かどうかの確認を

野良猫を保護したときに、まず最初にしてほしいことがあります。
それは、「本当に野良猫かどうかを確認すること」です。

確認方法

・耳がカットされていないか確認をする

・首輪をしていないか確認をする

・保健所や近隣の警察署・動物病院に特徴が一致する迷い猫情報がないか問い合わせる

・SNSやネット掲示板などで特徴が一致する迷い猫情報がないか確認をする

耳の先端が桜の花びらのようにV字型にカットされている状態の猫は、「さくらねこ」の可能性があります。「さくらねこ」とは、1度捕獲され不妊手術済の野良猫のことです。
右耳がカットされている場合はオス、左耳がカットされている場合はメスです。ただし怪我なのか意図的にカットされているのか区別がつかないため、最終的な性別判断や不妊手術の有無は動物病院で確認してもらいましょう。

また、人慣れしている様子がある場合は、外に出入りしている飼い猫であるというケースが少なくありません。動物愛護管理法により、2022年6月1日からブリーダーやペットショップ等で販売されている犬や猫については、マイクロチップが義務化されています。
外に出入りしている飼い猫についても、トラブルを防ぐためにマイクロチップを埋め込む飼い主が増えているので、動物病院を受診したら必ず確認してもらいましょう。

※マイクロチップについてはこちらのコラムをご覧ください。
【愛犬・愛猫の迷子対策に】マイクロチップ装着のメリットとは

野良猫であったとしても、それが子猫であった場合には、保護が必要であるかどうか慎重に判断しなければなりません。周囲に母猫がいる場合には、保護の必要はありません。かわいいという理由だけで子猫に触ると人の匂いが付いてしまい、母猫の育児放棄に繋がる可能性もあります。子猫の保護については、これらを踏まえてとくに慎重に判断する必要があります。

動物病院での健康診断も重要

野良猫を保護した場合は、動物病院へ連れていき健康状態を確認してもらいましょう。厳しい環境で生活している野良猫たちは、栄養状態に問題が生じていたり、感染症にかかっていることも少なくありません。一見健康そうな野良猫でも安心はできません。体の外側に寄生するノミやマダニだけでなく、おなかの中に寄生する回虫・条虫などの寄生虫や猫エイズ(FIV)・猫白血病(FeLV)などのウイルス性の感染症など、見た目だけで判断できない感染症も多くあります。必ず動物病院で検査をしてもらいましょう。

また、動物病院に連れていく場合は、前もって野良猫の様子を電話で伝え、動物病院の指示を仰ぎましょう。

知っておきたいポイント

※保護した猫の食事の内容や飼育環境については、栄養状態や年齢などの要因で異なってきます。獣医さんに相談を行ったうえで判断するようにしてください。

①子猫は“保温”が重要!

生まれたての子猫は自分で体温調節をすることができず、体温が低下すると衰弱してしまいます。子猫を保護し動物病院に連れていく際には、キャリーケースや段ボールなどにタオルを敷き、その下に保温ヒーター・湯たんぽ・使い捨てカイロなどを入れて保温してください。これらの保温グッズが手元に無い場合は、おうちにある空のペットボトルにお湯を入れるなどして保温を行いましょう。保温スペースの温度は、人肌より少し温かみを感じる温度(約38~40℃)が目安です。低温やけどの危険があるので、湯たんぽなどが直接体に触れないよう注意しましょう

②離乳前の子猫には、猫用ミルク以外与えない!

子猫の食事は、乳歯が生え始める3週齢までは、完全にミルクのみで栄養を補給する必要があります。この際に、猫用ミルク以外のミルクを与えないようにしましょう。なお人が飲む牛乳には乳糖が多く含まれています。猫には乳糖を分解する酵素が少ないので、消化が難しく、下痢や嘔吐を引き起こしてしまいます。必ず乳糖が少なく必要な栄養成分が含まれている猫用ミルクを人肌程度(約38~40℃)に温めてから与えましょう。乳歯が生え始めたら、子猫用フードと水を少しずつ与え猫用ミルクから徐々に切り替えていきます。消化能力が未熟な離乳期の初めのうちは、「猫用ミルクと混ぜて与える」「子猫用ウェットフードを与える」「子猫用ドライフードをふやかして与える」などの工夫をすると良いでしょう。生後6~9週齢で離乳期が終わります。

③お風呂には入れない!

保護した猫を綺麗にしてあげようと、お風呂に入れたくなるものです。しかし、お風呂は体力を消耗します。また、猫は水を嫌がることが多く、無理に入れようとするとストレスがかかってしまうため、おすすめできません。汚れを取ってあげたいときには、猫用のドライシャンプ―やお湯で湿らせたタオルやガーゼを用い、その後に乾いたタオルで拭き取るのが良いでしょう。

野良猫をお迎えするときの注意点

お迎えするときに必要なものリスト

・キャリーケース・ケージ

・ベッド

・キャットフード(猫用ミルク)

・哺乳瓶(猫用)

・フードボウル(猫用食器)

・給水ボウルまたは給水器

・猫用トイレとトイレ用品(トイレシートや猫砂など)

・掃除用具

・爪とぎ

・爪切りやブラシなどのお手入れ用品

これらは野良猫に限らず、新しくネコちゃんをお迎えするときには必要となります。
必要となるものをあらかじめ準備しておき、ネコちゃんが最初から快適に生活できる状態でお迎えしましょう。

※猫の室内飼育についてはこちらのコラムをご覧ください。
【猫の「完全室内飼育」のために】~猫の習性を考えて生活環境を整える~

先住猫がいる場合はどうする?


すでにおうちにネコちゃん(先住猫)がいる場合は、新たに野良猫をお迎えするときに気を付けたいポイントがあります。先ほども少し述べましたが、野良猫は病気や寄生虫を持っていることがあります。かかりつけの獣医さんからOKが出るまでは、先住猫と飼育ケージや飼育する部屋などを分けて完全に隔離しましょう。ご飯を食べるときに同じお皿を使わないように、それぞれ容器を分けて使用しましょう。なお、お迎えした野良猫と触れ合い終わったらすぐに、よく手洗いをしてください。

獣医さんからOKが出た後でも、すぐに近距離で対面させるのはNGです。先住猫にとって新入り猫は自分の縄張りに侵入してきた敵だと思われてしまいます。抱っこして先住猫に挨拶をさせるのもNGです。
新入り猫と先住猫を初めて対面させるときは、以下の手順を意識して対面させるのが理想的です。

手順1:隔離された部屋のドア越しなど、お互いの姿が見えない状態でそれぞれの匂いを感じさせる

手順2:触ることは出来ないが、キャリーケースやケージ越しなど、お互いの姿を見て認識することができる状態にする
※1日2~3回、1回あたり5分以下で実施。攻撃的な様子がなくなれば手順3へ

手順3: ケージ越しに触れ合わせる

手順4:手順3に慣れてきたら、見守りながら徐々に触れ合いを増やしていく

性別についても気にしておく必要があります。生後6ヶ月齢以上のオスメス同士だと「気付かないうちに妊娠していた」なんていうケースもあります。性別が異なる場合には、新入り猫と先住猫のどちらについても不妊手術をしておくと安心です。海外の研究では、6ヶ月齢未満に不妊手術を行うことで、「乳腺腫瘍の発生率が91%低下した」というデータもあります。子猫でまだ不妊手術の適齢期(約6ヶ月齢)を迎えていない場合には、生後6ヶ月頃の初めての発情が始まる前に不妊手術を受けるのが理想的です。

猫同士で感染のリスクが高い猫風邪(猫伝染性鼻気管炎)などは、ワクチン接種にて感染リスクを減らすことができます。先住猫の感染リスクを減らすためにも、ワクチン接種や寄生虫予防などは徹底して行いましょう。

※ワクチンについてはこちらのコラムをご覧ください。
《獣医師コラム》【犬猫の予防注射について】~毎年打っているけど、そもそも予防注射って何を予防しているの?~

妊婦さんは「トキソプラズマ感染症」に要注意

ご家族に妊婦さんがいる場合は、「トキソプラズマ感染症」に気を付ける必要があります。トキソプラズマ感染症は、トキソプラズマという寄生虫により起こされる感染症です。健康な人がトキソプラズマに感染しても問題にならないことが多いです。しかし、妊婦さんが妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合は、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症を発症する危険性があります。先天性トキソプラズマ症は、水頭症やてんかん、発育遅延を引き起こし、生命にかかわる慢性の疾患です。

なぜ、野良猫をお迎えするときに気を付ける必要があるかというと、ネコ科の動物だけが便にトキソプラズマを排出するからです。トキソプラズマの感染力は強く一年以上感染力を持ち続けます。もともと室内で飼っている猫の場合は、感染源となりうる生のお肉などを与えていなければ、感染している可能性は低いのですが、野良猫は感染源となるネズミや鳥の肉などを食べ感染している可能性が考えられます。
妊婦さんは、特に外の猫に触れないように気を付けましょう。

まとめ

野良猫を保護したときにどういったことが必要なのか、そしてお迎えするときの注意点などについてまとめました。
ネコちゃんのお迎え方法の約3割が「野良猫を拾った」というアンケート結果もあるように、野良猫が大切な家族になるケースも少なくありません。
野良猫を見つけたときや保護しようと思ったときは、今回の内容を思い出して参考にしてみてください。元野良猫をお迎えするときは、思いもよらない大変なことも出てくるかもしれません。困難があっても、新しい家族となる猫ちゃんと共に乗り越えていきましょう。

 

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