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《獣医師コラム》【猫のトイレ問題】排泄・ニオイのお悩みを深掘り!理想の猫砂は?病気のサインは?

こんにちは、レティシアン専属獣医師のCです。

猫に関するお悩みとして聞くことが多い「猫のトイレ問題」。

トイレに強いこだわりを持つ猫は多く、環境の変化やトイレに残った排泄物のニオイで尿意や便意を我慢してしまったり、本来の場所とは違う場所で排泄をしてしまったりするケースもみられます。

また、猫が泌尿器や消化器の病気にかかると、排泄物や排泄中のしぐさに病気のサインが見られる可能性があります。日々の様子をしっかりと把握しておくことで、大切な家族の不調をトイレからくみ取ることができ、病気の早期発見に繋がります。

今回は、猫のトイレに関する情報を深堀りし、よくあるお悩みと解決方法、理想のトイレの種類や環境、トイレで気付くことができる病気のサインなどをご紹介させていただきます。

猫にとっての排泄行為とは

野外で生活している猫たちは、下記のような流れで排泄をしています。

1.柔らかい砂をかいて小さな穴を掘る
2.穴の中に排尿・排便をする
3.砂をかいて排泄物を隠す

こうした排泄行動は、猫が昔から持つ、「ニオイを隠して敵から身を守る本能」が残っているためと言われています。

猫のトイレに関するよくあるお悩みと解決方法

本来の場所でトイレをしてくれない

猫が所定の場所以外でトイレ(排泄)をしてしまう場合、主に4つの原因が考えられます。

【原因①】トイレを設置した場所を猫がトイレだと認識していない
【原因②】トイレの設置場所やトイレそのものが気に入らない
【原因③】ストレスや病気を抱えている
【原因④】スプレー行動(尿マーキング)として排尿している

▼①②③の解決方法
生後間もない子猫や、おうちにお迎えしたばかりでトイレの場所が定まっていない場合、ケージや仕切りを使用して猫の行動範囲を制限し、そこに猫が好むようなトイレを用意すると、自然とそのトイレを使うことが多いです。
また、成猫になってからお迎えした場合は、すでにトイレの好みが確立していることが多いでしょう。所定の場所で排泄してもらうために以下の方法を試してみてください。

★所定の場所/トイレ以外に排泄物のニオイを残さない
完全肉食動物である猫は排泄物のニオイが強く、獲物に自分の存在を悟られないように一定の場所で排泄をする習性があります。そのため、一度排泄した場所に排泄物のニオイが残っていると、そこで繰り返し排泄をするようになってしまいます。
猫がトイレ以外の場所で排泄してしまった場合は、猫に害のない成分で作られているペット用消臭剤でしっかりと掃除を行い、排泄物のニオイが残らないようにしましょう。布団カバーなどの布製品は排泄物のニオイが染みつきやすいので、新しいものに取り換えた方が良いかもしれません。

★所定の場所以外をトイレとして利用できない/したくない場所にする
トイレ以外の場所で繰り返し排泄させないために、立ち入り禁止の部屋を設けたり、家具で通り道をふさいだりして、物理的にその場所に行けないようにしてしまうことも有効です。
クッションやお布団などに排泄をしてしまう猫の場合は、ビニール袋などで覆うことをおすすめします。猫はビニール袋のような素材の上では排泄したがらないといわれています。万が一、ビニール袋の上に排泄をしてしまったとしても、すぐに掃除ができてニオイも染みつかないので、トイレを失敗する回数を減らせるかもしれません。

★トイレの環境を整え、快適で落ち着ける場所にしてあげる
後述する【猫にとっての「理想のトイレ」とは?】の内容を実践し、猫が落ち着いて排泄できる快適な環境を作ってあげましょう。

★トイレ以外の環境を整え、ストレスを感じにくいおうちにしてあげる
トイレそのものに問題がなくても、環境ストレスが原因で猫がトイレを失敗してしまうことがあります。
ペットを含む家族構成や家具の配置、ご自宅の中の音やニオイ、お引っ越しなどに伴う環境の変化など、様々な要因が猫にとってストレスとなる可能性があります。
環境ストレスは「猫の特発性膀胱炎」という病気の原因にもなると考えられているので、猫が安心して過ごせる場所を用意してあげることがとても重要です。

環境作りのポイントについては、獣医師コラム「下部尿路疾患について」の中でもご紹介しておりますので、こちらもぜひチェックしてみてください。

▼④の解決案
スプレー行動(尿マーキング)は、排泄時の様子で通常の排泄と見分けることができます。

通常の排泄をしている場合
⇒水平方向に少しかがむような状態で通常量の排泄スプレー行動(尿マーキング)として排泄している場合
⇒垂直方向に立ったまま尾を上げて震わせながら少量を勢いよく排泄

 
スプレー行動(尿マーキング)は、自分の存在を他の猫に知らせる・自身が落ち着くために行う排泄行為です。元々外で暮らしていた猫や、未去勢の男の子によく見られます。去勢手術によって90%の猫でスプレー行動(尿マーキング)が減少したというデータがあり、未去勢の男の子の猫ではスプレー行動対策のために去勢手術が推奨されています。
おうちの外にいる他の猫や鳥などの動物、同居ペットなどの存在がスプレー行動(尿マーキング)の原因となることが多いので、以下のような対策をお試しください。

★カーテンなどを使って窓の外を見えないようにする
★他の猫と適度な距離を取れるようにそれぞれの猫が落ち着ける場所を作ってあげる
★キャットタワーやキャットウォークなどを設置してあげる

トイレのニオイが気になる

あるアンケートで、「ペットのニオイが気になる」と答えた猫オーナー様のうち、9割の方が「最も気になるのはトイレのニオイ」と答えたというデータがあります。それだけ猫のトイレのニオイは猫オーナー様の悩みの種になっています。

猫のトイレのニオイが気になる理由は、猫の尿に人間や他の動物とは違う成分が含まれているためです。空気に触れると強いニオイを発し、未去勢の男の子では特にニオイが強くなると言われています。かつ、④スプレー行動(尿マーキング)として排泄している場合、通常の排泄と比較して広く吹きかけるようにするため、特にニオイが広がりやすくなります。

キレイ好きな猫は、トイレが汚れていたり排泄物のニオイが強く残っていたりすると、トイレ以外の場所で排泄してしまうことがあります。人のためにも、猫のためにもしっかりとニオイの対策をしていきましょう。

▼解決案
・排泄後にすぐに掃除をする
・約2週間に1回、トイレ全体の掃除をする
・約1年に1回、トイレ全体を買い替える(プラスチック製の場合)
・ニオイがこもらない/留まらないように、トイレのある部屋をしっかり換気する
・消臭機能のある猫砂・ペットシーツを選ぶ
・トイレの形をフード型(屋根付きタイプ)にする

カバー付きのトイレは部屋全体にニオイが広がりにくい反面、トイレ内にニオイがこもりやすくなるため、こまめなお掃除が必要になります。また、屋根のついていないトイレを好む猫が多い傾向があるので、猫のトイレの好みに合わせてご使用ください。

猫にとっての「理想のトイレ」とは?

猫ごとにトイレの好みは千差万別です。各メーカー様から様々な種類のトイレ・猫砂・ペットシーツなどが販売されていますので、ぜひ愛猫の好みのトイレ環境を見つけてあげてください。

最適な「猫砂」を選ぶポイント

猫砂を選ぶ際は「砂の形や重さ」「香りの有無」「水分を含んで固まるかどうか」の3点を確認しましょう。

砂の質感については、本物の砂に近いように、粒が小さくて少し重さのあるものを好む猫が多いといわれています。粒が大きすぎると、肉球の間に挟まってしまって、踏んだときに痛みや違和感を生じてしまうことがあります。粒が軽すぎると、あまり掘っている感覚を得にくく、猫に好まれないようです。

香りの有無については、様々な素材・香りの猫砂が販売されていますが、まずは無香料のものから始めるのがおすすめです。

また猫砂のなかには水分を含んで排泄物と一緒に固まるタイプと固まらないタイプがあります。固まるタイプの砂だと毎回すべての砂を交換しなくても、固まったところだけ捨てればOKなので、オーナー様のお掃除の手間が省けるというメリットがあります。猫も固まる砂を好む傾向があるようなので、猫が嫌がる様子がなければ固まるタイプの砂がおすすめです。

これらの条件を満たす猫砂を、掘っても底が見えないくらい(深さ3~5㎝以上)たっぷり入れましょう。

そして、猫砂には下記のような様々な種類の素材があります。メリット・デメリットを参考にお試ししてみてください。新しい猫砂に変更する場合は、元々使っていた猫砂に新しい猫砂を少しずつ混ぜてゆっくり切り替えましょう。

トイレの選び方

トイレの大きさや深さ、縁やカバーの有無が猫の好みを左右します。

理想のトイレサイズは、猫の体長の1.5倍以上とされています。猫によってトイレの好みは様々ですが、一般的にはカバーのないトイレを好む猫が多いと言われています。縁(ふち)もできるだけ低く、猫が出入りしやすいものを選びましょう。

市販の猫用トイレはやや小さめなこともありますので、衣装ケースやホームセンター等で手に入るコンクリートを混ぜる容器(プラ舟・トロ舟)を使ってみるのもおすすめです。これらをトイレとして使用する場合は、猫が中に入りやすいように縁(ふち)の部分を切り取って段差を低くしてあげるといいでしょう。

多少割高でアイテムの用意が必要ですが、上の段がスノコ(猫砂)、下の段がトレー(シート)のシステムトイレも排泄物の処理が簡単ですので、こまめなお掃除が難しい方はぜひお試しください。

最近では、猫が入ると自動的に体重計やペットカメラが起動し記録を取ってくれるトイレもあるそうです。例えば多頭飼いでトイレに血尿が見られた場合、普通のトイレだとどの猫が血尿を出しているのか分かりにくいですが、自動で記録を取ってくれるトイレだとある程度は予想できるかもしれません。

※高齢の猫は関節の痛みや筋力の低下が見られやすく、「入りやすさ」が非常に重要となります。トイレの縁(ふち)の高さを低くしたり、スロープを設置してあげたりすることがおすすめです。

猫のトイレの配置場所

オーナー様の目の届く範囲で、人や物の出入りが少ない落ち着いた場所がおすすめです。猫が野生の頃は、巣穴や食事場所から離れた所を好んでいたようなので、寝床・食事や水を与える場所から近すぎない所が良いでしょう。トイレの我慢を防ぐためにも、いつでもトイレができる環境にしておくことが大切です。トイレが置いてある部屋は自由に出入りできるようにしておき、夜間でもアクセスしやすい場所にしましょう。

多頭飼育のご家庭で猫同士の仲があまり良くない場合、トイレまでの通り道に他の猫がいるだけで、そのトイレを使わなくなってしまうことがあります。

多頭飼育のご家庭では、複数の経路から各トイレに辿り着けるように配置してあげたり、キャットウォークなどを設置してあげたり、猫たちが立体的に空間を利用してすれ違えるように工夫をしてあげましょう。

多頭飼育のトイレの数

猫の頭数+1個以上の数が理想のトイレの数と言われています。隣接させると1個置いているのとあまり変わらないので、少し離れた場所や別の階に置きましょう。

トイレのお掃除

快適にトイレをしてもらうために、汚れ・ニオイが残らないよう日頃の掃除を徹底しましょう。猫砂の場合、排泄物や排泄物のまわりだけを捨てることが多いかと思いますが、他の猫砂にもニオイはうつるので、2週間に1回は全体を入れ替えてあげましょう。

また掃除用の洗剤はあまりニオイがきつすぎないものを選びましょう。最近は、自動で猫砂を入れ替えてくれる自動洗浄機能付きのトイレも販売されているので、お仕事などで頻繁なお掃除が難しいオーナー様におすすめです。

トイレで気付くことができる病気のサイン

排泄物・トイレの様子は体調を表す重要な情報の1つです。「いつもと違うかも?」と思ったらすぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

こんなときは病気のサインかも

消化器・泌尿器など、体の中の状態と排泄物は密接な関係があります。下記のときは何か病気のサインかもしれません。病院へ行く際には、診断の参考になる場合もあるので、できれば実際の排泄物を持っていきましょう。

・トイレの回数が大きく増えた/減った
・排泄物の色/形/量/硬さ/ニオイが大きく変わった
・排泄物に別の色が混ざっている
・排泄がスムーズにできていないように見える
・排泄時に鳴く
※緊急度が高い病気のサイン
・尿が数日出ていない
・尿に血が混ざっている

▽尿について何か気になった時はこちらのコラムもチェックしてみてください。
《獣医師コラム》「下部尿路疾患について」

▽軟便・下痢が見られた時はこちらのコラムもチェックしてみてください。
《獣医師コラム》【愛犬・愛猫のトイレ問題】~軟便・下痢の原因~

トイレの「普通の状態」の把握が重要

色・形・量・硬さ・ニオイ・トイレの回数を、大まかにでも良いので「普段の状態」を把握していると変化に気付きやすいです。多頭飼いのおうちは、なかなか個別に猫の様子を把握するのは難しいかもしれません。しかし猫の泌尿器疾患では緊急性の高いものもあるので、できるだけ把握できるよう日頃から様子をチェックしてあげてください。

まとめ

猫のトイレについてのコラムはいかがでしたでしょうか?

多頭飼育のご家庭では、それぞれの猫の排泄のタイミングや排泄物の変化について気付きにくいことがあるかと思います。

体調の変化が出た頃には病気が進行してしまっていることもあるので、定期的に動物病院で便検査・尿検査を含めた健康診断を受診するようにしましょう。

トイレでの排泄は毎日することだからこそ、言葉を話せない猫の体調の変化に気付きやすい重要な情報です。大切な家族の病気を早期発見・早期治療できるよう、普段の様子をしっかりと見て、何かおかしいかもしれないと思ったらすぐにかかりつけの動物病院・獣医師に相談してください。

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