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《獣医師コラム》【犬の寄生虫】愛犬や自分に感染する恐れがある寄生虫とその対策!

みなさんの愛犬は、定期的に寄生虫を予防する薬を使用していますか?
犬に感染する恐れのある寄生虫の中には、感染した時に死に至ったり、人にも感染する寄生虫がいます。
愛犬と健康に安心して生活するためには、寄生虫について正しい情報を取り入れて、定期的な予防・駆虫を行っていくことが大切です。
そこで今回は、寄生虫の種類や特に気をつけたい身の回りの寄生虫、対策などを紹介していきたいと思います。

寄生虫について

寄生虫とは、動物の体の表面や体内に寄生して、栄養を吸収して生きていく生物です。
寄生する場所が体の内部なのか外部なのかによって分類されています。
また、犬にだけ寄生するものや、人にも寄生するもの、他の動物に寄生するものなど様々なタイプの寄生虫がいます。

内部寄生虫とは

内部寄生虫とは、内臓や血管、筋肉など体の内部に寄生する寄生虫です。
内部寄生虫は非常に種類が多く、寄生する場所、感染した時に出る症状、感染するきっかけ(感染経路)、虫自体の見た目もバラバラです。
犬の内部寄生虫の代表例として挙げられるのは、犬を飼っている人なら良く耳にするフィラリアです。

外部寄生虫とは

外部寄生虫とは、体の外部つまり皮膚表面に寄生する寄生虫です。
外部寄生虫は栄養を取り込むために、犬の皮膚を傷つけてしまいます。
その結果、かゆみが生じたり、別の病気に感染したりします。
犬の外部寄生虫の代表例として挙げられるのは、人にもかゆみを生じさせるノミ・ダニです。

気をつけたい主な寄生虫

フィラリア(犬糸状虫)

フィラリアは、蚊の吸血によって犬に感染するそうめんのような見た目の寄生虫です。
犬糸状虫という名前ですが、犬の感染が多いだけで猫や人にも感染します。
日本は全国的に発生が見られるため、予防しなければ高確率で感染すると言われています。
最初は咳が出たり、運動をいやがったり、風邪かな?と思う症状なのですが、徐々に痩せていき、呼吸困難となり死に至ります。
死に至る恐ろしい病気かつ関東でも感染しているのをよく見る病気なので、必ず毎年動物病院で検査をしたあとにワクチンを接種するか予防薬をもらいましょう。

ノミ

ノミは、犬の体表に寄生する外部寄生虫です。
かゆみを引き起こすイメージが強いのですが、ひどいと貧血や皮膚炎を引き起こすこともあります。
暖かい時期(13℃以上)に活動すると言われていますが、卵やさなぎの状態では寒い冬を生き抜くことができます。
そのため、1年中絨毯や布団など家の中に潜んでいる可能性があるのです。

マダニ

マダニは噛まれても痛みが生じず、吸血してマダニの体がパンパンに膨らんでから気づかれることが多いです。
一度吸血を始めたマダニは皮膚から取り除くことはせずに、見つけたらすぐに動物病院へ連れていきましょう。
また、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気を持っているマダニに人が噛まれると、発熱・下痢などを引き起こし、10~30%の確率で死亡します。
日本では西日本を中心に感染が確認されていましたが、最近感染地域が拡がり、感染者数も増えています。
散歩中に愛犬が草むらに入ったときは、マダニを連れて帰ってきていないかチェックをしましょう。

人も注意したい寄生虫

人にも感染?病気を運ぶ?

犬に感染する寄生虫の中には、人にも感染する寄生虫や、感染はしないが病気を運んできてしまう(病気を媒介する)寄生虫が存在します。
身の回りではあまり耳にすることは無いかもしれませんが、死亡例もある怖い寄生虫もいるため、愛犬のためにも自分のためにもきちんと正しい知識を取り入れておきましょう。

犬回虫

犬回虫は、犬の腸内に生息する細くて長い白色の糸状の内部寄生虫です。
犬は卵で汚染された土や食べ物を口にすることで感染し、腹痛、嘔吐、体重減少などの症状をもたらします。
母犬がすでに感染していると、胎盤や、母乳から子犬へ感染することがあります。
体内で移動している成虫は検出が難しい上に、一部の幼虫は薬の効果が弱いため、一度感染すると厄介です。
人の場合、犬の便の中にひそむ虫卵が口から入り、肝臓や肺あるいは脳などに移動して障害を引き起こします。
犬回虫はフィラリアと一緒に1粒で駆虫できる薬があるので、そちらで対策するのがおすすめです。

瓜実(うりざね)条虫

瓜実条虫は、犬や猫、フェレットで感染報告がある寄生虫です。
犬ではほとんどが無症状ですが、腸内で切り離された虫の一部(片節)が肛門から出る時に痒みが生じ、さかんに肛門周囲を気にします。
便と一緒に出てきたときにはうにょうにょと動くため、びっくりされるオーナー様が多いです。
寄生数が増えると、激しい下痢や体重減少を起こすことがあります。
犬も人も、瓜実条虫に感染したノミを誤食することで感染します。
そのため、日本で確認されたほとんどの症例が、よく手やぬいぐるみを口に入れてしまう小児です。

トキソプラズマ症

トキソプラズマは、ほとんどすべての哺乳類・鳥類に感染する寄生虫です。
人は、過熱不十分な豚肉や野良猫の便から感染することが多い病気です。
健康な人であればほとんど症状は出ないと言われていますが、怖いのは妊婦さんの感染です。
妊婦さんがトキソプラズマに感染した場合、流産してしまったり、胎児に障害が出てしまったりします。
犬はふつう症状が出ませんが、免疫がひどく落ちた時に下痢、呼吸困難などが生じます。
野良猫の便は公園の砂場や草むらにあることが多いので、子供や犬が触ったり、食べたりしないように気を付けましょう。
また、妊婦さんは、お肉を食べるときはしっかりと火を通し、ガーデニング後や猫を触った後は手をよく洗うようにしましょう。

エキノコックス症

エキノコックスは、北海道のキツネ・ネズミの間で広がっている寄生虫です。
キツネや犬の便や、汚染された水・食べ物などを口にすることで人は感染し、致死的な肝臓の障害をもたらします。
潜伏期間が長いことも特徴で、感染してから自覚症状が出るまでに数年から10数年かかり、気がつかないうちに悪化してしまう病気です。
野山の果実や山菜などを口にする場合は、良く洗うか十分熱を加えてから食べましょう。
また可愛いので触りたくなってしまいますが、野生のキツネは触らないようにしましょう。
犬は感染した野ネズミを食べることによって感染するため、拾い食いをさせない・放し飼いをしないことが大切です。

感染したかもと思ったら

すぐに動物病院へ

ご紹介したような症状が出た時、または便や体の表面に虫体が確認された時は、すぐに動物病院へ行きましょう。
あらかじめ病院へ連絡しておくと、病院側も感染が広がらないような準備ができるので親切です。
感染が疑われる寄生虫の種類によって異なりますが、寄生虫の検査には、便検査・身体検査・血液検査など様々な検査があります。
獣医師様と相談し、適切な検査・治療を行いましょう。

他の同居ペットの隔離

寄生虫の中には、同居している他のペットに簡単に感染が広がってしまうものがいます。
感染が確認された場合、または疑われる場合は、すぐに同居しているペットたちと離しましょう。
共用している物を分けたり、別の部屋で過ごしてもらったり、物理的な距離は感染防止に有効です。
診断された際に、獣医師様に隔離が必要な寄生虫なのか確認すると安心です。

感染しないために

定期駆虫が1番のおすすめ

フィラリア・ノミ・ダニ・他にもさまざまな寄生虫を一度に駆虫・予防できる薬がおすすめです。
飲み薬タイプ背中にたらす液状タイプが手軽なので、1ヶ月に1回(薬によっては3か月に1回)利用しましょう。

おうちのケア

人の服や靴などにノミや卵が家の中に持ち込まれ、布団や絨毯で繁殖してしまうことがあります。
うちにはノミはいない!と思うかもしれませんが、人の目に見えるのは成虫のノミだけで、ノミ全体のわずか5%にしか過ぎません。
残りの95%は卵、幼虫、さなぎの状態で潜んでいるので、掃除機や天日干し、スプレーなどおうちのケアも定期的に行いましょう。

お散歩帰りに体チェック

お散歩コースに草むらや藪がある場合は、できるだけ侵入をさせないようにしましょう。
お散歩やキャンプなどのおでかけからお家に帰ったら、虫が付いていないか確認のためにもブラッシングすることをおすすめします。
月1~2回のシャンプーによるスキンケアも有効です。

まとめ

愛犬は健康だから大丈夫、都会に住んでいるから関係なさそうと思いがちですが、1度感染するとおそろしい寄生虫はたくさんいます。
フィラリアなど今回挙げた寄生虫に感染すると、治療に非常に苦しみ、多額の費用がかかってしまうことがあります。
そのようなことがないように、寄生虫についてしっかりと正しい情報を取り入れ、予防して愛犬の健康を守りましょう。

 

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