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《獣医師コラム》【涙やけ】はなぜ起きる? 涙やけの原因やおうちでの予防方法も!

こんにちは、レティシアン専属獣医師のTです。

ワンちゃんやネコちゃんの目の下に赤茶色にのびる「涙やけ」。涙やけの症状がひどいと、健康面や美容の観点からも心配になりますよね。

そこで今回のコラムでは、涙やけの原因から、涙やけを起こしやすい犬種・猫種、対処法などをご紹介します。おうちで今すぐ行うことのできるケアもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

「涙やけ」とは?

涙やけとは、涙でぬれた目の周り(主に目の下)の毛が、赤茶色に変色した状態のことです。

目から涙があふれた後に、毛の上で涙の成分が酸化したり、細菌が繁殖したりすることで毛の色が変わります。涙やけがひどい場合は、目の病気の可能性も。放置すると皮膚炎につながることもあります。また、ニオイや美容の面が気になるオーナー様もいらっしゃるでしょう。

涙やけが気になった場合は、まずケアをしてあげましょう。症状がひどい場合は、動物病院で目の検査をすることをおすすめします。

涙やけの原因

涙は「外界の刺激から目を守る」「目に酸素や栄養を供給する」といった役割を担っています。目の表面は常に涙で覆われており、通常であれば、目からあふれるほど涙が作られることはありません。

しかし、涙を過剰に生産する原因があったり、涙を目の上に留まらせておく能力や、涙を排泄する通り道に異常があったりすると、涙が目からあふれ出てしまいます。これを「流涙症」といい、涙やけの原因となります。

ではどうして「流涙症」になってしまうのでしょうか?考えられる原因をいくつかご紹介します。(今回紹介した以外の原因もあります)

涙の過剰生産

まつ毛の異常
まつ毛に異常があると、目の表面の角膜をまつ毛が刺激して、涙が過剰に作られます。
ひとことに「まつ毛の異常」と言っても、様々な状態があります。

 

まつ毛の異常

■睫毛重生(しょうもうじゅうせい):通常のまつ毛よりも少し内側から、重なるようにまつ毛が生えている状態

■睫毛乱生(しょうもうらんせい):通常のまつ毛とは違う方向に、目に入るようにまつ毛が生えている状態

■異所性睫毛(いしょせいしょうもう):通常のまつ毛とは違う場所(特に多いのは上まぶたの裏)からまつ毛が生えている状態

 

放っておくと、目の表面が傷つく&治るを繰り返し、目の病気の要因となることも。また、ワンちゃんやネコちゃんが目の違和感から自分で掻いてしまい、ケガをしてしまうケースもあります。

目の病気を併発していなければ、まつ毛の異常による流涙症の場合、異常なまつ毛を処理してもらうことですぐに改善するケースが多いです。軽度であれば、動物病院で定期的に抜いてもらうと良いでしょう。ただし、毛根から対処しない限り、まつ毛は数週間~数ヶ月後に同じ場所から生えてきます。重度であれば全身麻酔で手術し、毛根ごと除去することで完治を目指せます。おうちでまつ毛をケアするのはなかなか難しく、目のケガにもつながる可能性があるので、無理に抜かないようにしましょう。

眼瞼内反症
眼瞼内反症とは、名前のとおり「瞼が内側に反り返ってしまっている」状態で、ワンちゃんに多いです。

瞼が内反していると、涙の出口の涙点から鼻への涙の排泄ができなくなります。また、内反している瞼は、正常な瞼と比較してキープできる涙の量が少なくなるため、目から涙があふれやすくなります。さらに、内反した瞼から生えているまつ毛が目の表面の角膜を刺激して、涙が過剰に作られます。

生まれつき眼瞼内反症になりやすい子はいますが、他の目の病気が原因となっていることがあります。他の目の病気が原因の場合は、そちらの治療をし、必要であれば手術を行います。

涙の貯留能力・排出経路の異常

鼻涙管閉塞
涙は、涙腺と瞬膜腺で作られて、目の表面全体を覆っています。そして瞬きの際に、涙点という目頭あたりにある孔から鼻涙管という管を通って、鼻の中に排泄されます。この目から鼻までのルートのどこかが狭かったり、詰まっていたりと異常がある場合、涙がうまく排泄されず目からあふれてしまいます。この異常は先天的(生まれつき)に涙点が塞がっていたり、存在しなかったり、後天的に炎症・異物・ケガ等が原因で起こります。

動物病院では、専用の色のついた液体を目に入れて、1分前後で鼻から流れ出てくるかどうかで閉塞していないかをチェックすることができます。あまり痛みをともなわず時間もかからない検査方法のため、涙やけの原因を調べるときによく使用されます。詰まりが見つかった場合は、鎮静や全身麻酔下で一時的に詰まりをとる処置(鼻涙管洗浄)などがあります。

マイボーム腺機能不全
マイボーム腺とは、まつ毛の生え際あたりにある白いプツプツが出口の、油成分を分泌する腺です。油は、涙のような水成分と相反するように思えますが、目の表面から涙が蒸発するのを防いだり、目の表面に涙を広げる助けをしたり、瞬きの摩擦を減らしたりと、たくさんの重要な役割があります。

マイボーム腺機能不全症は、マイボーム腺から油成分の分泌がうまくいかず、涙が目の表面に広がり、とどまることなく下瞼に溜まり、あふれ出てしまいます。涙やけがひどい場合は、動物病院でマイボーム腺が閉塞していないかどうかをチェックしてもらいましょう。

その他
炎症をともなう目の病気や、異物が入ったときも涙は過剰生産されます。涙以外にも症状が出るはずなので、白目の色や、手で掻いて気にしている様子がないかどうかをチェックし、獣医師様に相談しましょう。

涙やけが軽度で他に症状が出ておらず、動物病院での目の検査で異常がなければ、あまり気にしなくても良いケースもあります。

涙やけを起こしやすい犬種・猫種は?

トイ・プードル

マルチーズ

この2犬種は、もともと涙の通り道である鼻涙管が詰まっていたり、狭かったりすることが多く、涙があふれやすいです。

また、目の上の毛が長い子や、逆さまつげがある子も多く、自分の目周りの毛やまつげによって目の表面が傷つけられ、涙があふれることで涙やけが起こりやすいです。

柴犬

柴犬はアレルギーになりやすく、涙が多くなって涙やけが生じやすいです。

涙やけの他にも、アレルギーによって皮膚のかゆみや下痢、嘔吐などの消化管障害が生じやすいため、涙やけ以外にも症状が出ていないか気をつけてあげましょう。

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シーズー

パグ

チワワ

フレンチブルドッグ

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ペルシャ

チンチラ

エキゾチックショートヘア

スコティッシュフォールド

ヒマラヤン

これらの短頭種は、他の犬種・猫種と比べて、鼻涙管が詰まることで涙やけを起こしやすいといわれています。

また顔の構造上、目に毛が入りやすく、涙やけが生じやすいです。特にシーズーやパグは、瞬きによって瞼がしっかりと閉じきることが難しいためドライアイとなり、その結果、涙やけが生じてしまいます。

症状をともなう涙やけは病院へ

目を気にする様子が多い

目が痙攣している

白目部分が充血している

瞬きが多い

まぶしそうにしている(羞明)

このような症状が見られたときは、目や体全体に何かしら異常がある可能性があります。動物病院で検査してもらいましょう。

涙やけがひどくなると細菌感染しやすくなり、皮膚が炎症を起こしたり、かゆみが生じたりする場合があります。早めにその子に合ったケアを動物病院で教えてもらい、対策をしましょう。

涙やけのおうちケア

目の周りのお手入れ

涙やけを防ぐには、涙をこまめに拭き取ってあげることも有効です。人間の化粧品用コットンを湿らせて使用すると、固まってしまった涙や目やにがとれやすく、皮膚への刺激を最小限に抑えることができます。

また、目の周りの毛が長く、目の中に入ってしまう子は、こまめに目の周りの毛をカットしてあげると良いでしょう。まつ毛を抜くのはなかなか難しいですので、動物病院で処置してもらうと安心です。

眼瞼マッサージ

マイボーム腺からでた油成分を目全体に広げるために、眼瞼マッサージも有効です。眼瞼マッサージとは、人の手でワンちゃん・ネコちゃんの目を閉じて開いてを繰り返すマッサージです。

先述で説明したとおり、パグなどの短頭種の子に多いのですが、瞬きをしているように見えて、完全に目を閉じきれておらず、その結果、油成分が目の表面に広がらずドライアイになってしまうことがあります。そのような子は、眼瞼マッサージでマイボーム腺から出た脂成分を目の表面全体に拡げてあげると、涙やけが改善する場合があります。マイボーム腺の出口に油成分が固まっていることもあるので、人肌くらいのホットタオルを当てながら行うと、油成分が溶けながら拡がっていき、より効果的です。ホットタオルの温度は人肌よりやや温かい温度に調整し、火傷しないように気をつけましょう。

フードを変える

涙やけがアレルギー反応によるものだった場合、フードの変更も効果的です。

フードの中の脂質成分が、マイボーム腺から分泌される油の成分のバランスを変えて良化することもあるといわれていますので、涙やけが酷い場合は、その子に合うフードを探してみるのもいいかもしれません。

しかし急にすべてのごはんを変更すると、胃腸に負担がかかります。体に合わない場合もあるため、最初はもとのごはんにトッピング程度から、徐々に割合を増やしていきましょう。

まとめ

ワンちゃん・ネコちゃんの涙やけは、体質的なものから、鼻涙管・まつ毛・瞼の異常まで、様々な原因が考えられます。涙やけがひどいなと思ったら、放置せず、まずは動物病院で原因を探りましょう。

先天的なものが原因でも、おうちでのケアで涙やけは改善することがあります。動物病院の先生と相談しながら目薬やおうちケアを行い、手術なども検討しましょう。

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