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《獣医師コラム》【愛犬・愛猫のトイレ問題】~軟便・下痢の原因~

愛犬・愛猫が軟便・下痢をしてびっくりされた経験のある方も多いのではないでしょうか。

言葉を話せないワンちゃん・ネコちゃんにとって、便の状態は体調を表す重要な情報の一つで、動物病院に来院されるワンちゃん・ネコちゃんの多くが消化器症状で受診されています。今回は、そんな軟便・下痢の原因について紹介します。

軟便・下痢とは

「通常より便が柔らかい状態」を軟便と呼び、「正常よりも水分の多い便が出ている状態」を下痢と呼びます。

厳密に言えば軟便も下痢に含まれるのですが、一般的には便に形があるものを軟便ないものを下痢と呼ぶことが多いです。

軽症であれば自然に治まったり薬ですぐに落ち着くことも多いのですが、軟便・下痢が続いてしまうと体内の水分が失われてしまい脱水に陥ってしまったり、ミネラルバランスの乱れや栄養吸収不良などの原因となってしまうため、十分注意しましょう。

一口に軟便・下痢と言ってもその原因は多岐にわたり、症状や治療、重症度も様々です。
普段からおなかがゆるくなりやすく「なんだ、またいつもの軟便・下痢か」と思っていても実は裏に重大な病気が隠れているというパターンも珍しくありません。

軟便・下痢の原因

ストレス

運動不足や長時間のお留守番、工事や雷・花火などの大きな音、ペットホテルや引っ越しに伴う環境変化など、ワンちゃん・ネコちゃんのストレスになってしまう要因は様々です。ストレス要因をなるべく避けるように心がけましょう。

お留守番が苦手なワンちゃん・ネコちゃんの場合、なるべくお留守番の時間を短くしてあげましょう。お留守番だと気づかれないよう、出かける際に挨拶をせずに静かに家を出たり、おやつに夢中になっている間にサッと家から出るようにすると良いでしょう。
ペットカメラなどを活用してオーナー様の声を聞かせてあげても良いかもしれません。

工事などの大きな音が苦手なワンちゃん・ネコちゃんの場合は、なるべく音の聞こえにくい部屋に避難しましょう。
また、苦手な音が聞こえている間におやつを与えたり遊んであげると、音と楽しい記憶を結び付けてストレスを感じにくくなります。

食べ過ぎ

食べ過ぎによって消化吸収が追いつかず、一時的に軟便・下痢をすることがあります。
食べ過ぎてしまったときは、しばらくフードやおやつを与えず、お腹を休めてあげましょう。

フードの品質

食品に含まれる脂質は空気に触れると徐々に酸化が進み、香りや品質が変化してしまいます。
傷んだフードを食べると軟便や下痢を引き起こすことがあります。
開封したフードはできるだけ空気に触れないように高温多湿を避けて常温で保存いただき、賞味期限にかかわらずなるべく早めに食べきるようにしましょう。

食物アレルギー

食事に含まれるタンパク質にアレルギー反応を起こすことを食物アレルギーと呼びます。
ワンちゃん・ネコちゃんの食物アレルギーは痒みなどの皮膚症状を伴うことが多いのですが、軟便・下痢などの消化器症状を伴うケースもあります。
食物アレルギーによる下痢は、原因となっているタンパク質の入っていないフードに切り替えると改善します。原因となるタンパク質は個体によって異なるため、かかりつけの獣医師様と相談しながらフードの切り替えを行いましょう。

誤食

おもちゃのかけらや小石などの異物を飲み込んでしまうと、消化管が物理的に刺激され軟便・下痢を引き起こすことがあります。
便と一緒に異物が排出されれば症状は改善しますが、内視鏡や外科手術で異物を摘出しなければいけないケースもあります。
お散歩中や目を離す際は十分注意し、何かを飲み込んでしまったのを目撃したらすぐに動物病院へ連れていきましょう

感染症

細菌・ウイルス・寄生虫といった病原体の感染によって軟便・下痢を引き起こすことがあります。
子犬・子猫では重症化しやすいため、お迎えしたら定期的に動物病院で便検査と健康チェックをしてもらいましょう。

細菌性腸炎
サルモネラ、大腸菌、クロストリジウム、カンピロバクターなどの細菌が感染することによって起こります。
抗生物質などの薬を使って治療します。

ウイルス性腸炎
犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬コロナウイルス、猫腸コロナウイルスなどのウイルスに感染することで起こります。
脱水があれば点滴を行うなど、対症療法が治療の主体となります。
混合ワクチンで予防できる病気もあるので、毎年のワクチン接種を忘れないようにしましょう。

寄生虫性腸炎
ジアルジア、トリコモナス、瓜実条虫、猫回虫などの寄生虫の感染によって起こります。
主に駆虫薬を使って治療します。
便から感染するものが多いため、お散歩の際に他の動物の便を舐めたり食べてしまわないように注意しましょう。

腸リンパ管拡張症

腸のリンパ管の流れが悪くなることで、便とともにタンパク質が体外に漏れ出てしまう病気です。
下痢のほかに体重減少、お腹が張る、むくみなどが症状として現れます。
診断には内視鏡や外科手術で腸粘膜を採取した織学的検査が必要です。
低脂肪食を使った食事療法を行ったり、内服薬の継続投与が必要になる場合もあります。

消化管腫瘍

消化管に発生するがんです。
リンパ腫、腸腺癌、平滑筋肉腫など様々な種類があり、症状も様々です。
外科手術や化学療法、放射線治療またはそれらを組み合わせることによって治療します。

消化管以外の病気

膵炎や膵外分泌不全、肝臓や胆嚢の疾患、子宮蓄膿症やホルモンの病気など、消化管以外の様々な病気でも軟便・下痢を引き起こすことがあります。原因によって症状や治療法は様々です。

まとめ

今回は軟便・下痢を起こす主な原因について紹介させていただきました。
日常生活の見直しで対策できるものから手術が必要になるような重度なものまで、様々な原因があることをお分かりいただけたでしょうか。今回紹介させていただいたのはほんの一例で、実際にはもっと多くの病気が軟便・下痢の原因となる可能性があります。

軟便・下痢という症状のみではどの病気か判断することは難しく、便検査や一般身体検査、X線検査、超音波検査、血液検査など、様々な検査を組み合わせないと診断ができないケースも珍しくありません。
しかし、どの病気に関しても共通して言えるのは、「早期発見・早期治療が大事」ということです。

体調の変化があったら動物病院を受診するのはもちろんですが、オーナー様が人間ドックを受けるように、ワンちゃん・ネコちゃんも定期的に動物病院での健康診断を受けることで、症状が出る前に病気の発見ができることがあります。

軟便・下痢で動物病院を受診される際は、便をビニール袋などに入れて持っていくことを忘れないようにしましょう。
また、分かる範囲でいいので、以下の情報をまとめておくと、スムーズな診断・治療につながります。

 

・いつから便がゆるくなったのか
・排便回数、便の形や色の変化
・症状の出始めから今までの変化(良くなっている、悪くなっている、変わらない)
・軟便・下痢の心当たり(フードの変更、拾い食い、ストレス要因など)
・その他に症状はあるか
・過去に同じような症状が出たことはあるか(あればその時の様子)

 

ただの軟便・下痢と甘く見ずに、体調の変化があったら早めに動物病院を受診するようにしましょう。

 

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