こんにちは、レティシアン専属獣医師のJです。
気温も上がってきて、いよいよ夏本番がやって来ます。夏休みには愛犬・愛猫と一緒におでかけを予定している方も多いのではないでしょうか。
夏は楽しいイベントがいっぱいですが、実はワンちゃん・ネコちゃんにとって “危険の多い季節”でもあります。
今回は、愛犬・愛猫と楽しく夏を過ごすために気を付けていただきたいポイントをご紹介します。
目次
熱中症
夏場のおでかけなどの際に、もっとも気を付けたいのが「熱中症」です。
毎年夏になると熱中症のニュースをよく耳にしますが、熱中症に注意しなければならないのは人間だけではありません。ワンちゃん・ネコちゃんにも熱中症の危険があります。
ワンちゃん・ネコちゃんの体温調節
暑い夏の日に、地面に水をまく「打ち水」をされたことはありますか?
水のような液体には蒸発する際に周りから熱を奪う性質があり、これを「気化熱」と呼びます。打ち水はこの気化熱を利用して周囲の温度を下げる仕組みです。
暑いときに人間が汗をかくのも、汗が蒸発する際の気化熱によって体温を下げるためです。しかし、人間と違ってワンちゃんやネコちゃんは全身で汗をかくことができないため、比較的体温調節が苦手とされています。
その代わり、ワンちゃんは暑くなるとハァハァと呼吸をします(パンティング)。
これも唾液が蒸発する際の気化熱によって気道の温度を下げる仕組みなのですが、全身で汗をかくのと比べると体温調節の効率は良くありません。また、湿度が上がるほど液体は蒸発しにくくなるため、蒸し暑い日には体温調節はさらに難しくなり、熱中症の危険性が高まります。
ネコちゃんはめったに口を開けて呼吸することがないため、体温を下げるのがさらに苦手だといわれています。冷たい床や涼しい場所を求めて移動し横になることなどで体温を調節しています。
夏場の温度管理
全身を毛で覆われているワンちゃん・ネコちゃんは、扇風機だけでは上手く体温を下げることができません。夏場はエアコンを使って、室温と湿度をしっかり管理してあげましょう。
お部屋の広さや日当たりなどによって異なりますが、以下を目安に調整すると良いでしょう。
・温度:20~25℃程度
・湿度:60%以下
また、愛犬・愛猫と車でおでかけする際は、車内温度にも十分注意しましょう。
JAF(日本自動車連盟)の実験によると、エアコンを切った車内では、わずか15分程度で熱さ指数が危険レベルまで上昇するとされています。短時間であっても、車の中に愛犬・愛猫を放置しないようにしましょう。
水分補給
ワンちゃん・ネコちゃんともに、脱水を起こさないように水分補給をしっかり行うことが大切です。あまり水を飲まない子にはウェットフードを与えたり、お肉のゆで汁をフードに混ぜたりするなど、食事に含まれる水分量を増やすことも効果的です。
地面の温度
おでかけなどの際に、熱中症とあわせて注意したいのが 「地面の温度」 です。
実は、気温が高いときには地面の温度はもっと高くなっています。
私たち人間は屋外では靴を履くため、地面の温度を気にすることはめったにありませんが、ワンちゃんにとって炎天下のアスファルトの上でのお散歩は、鉄板の上を裸足で歩いているようなものです。
熱いアスファルトの上を歩くと、肉球を火傷してしまうなどの危険があり、大きなストレスになってしまう可能性があるので要注意です。夏場のお散歩は、明け方や日没間際など気温の低い時間帯で行いましょう。その際にも、まず地面が熱くなっていないか手で触って確認してからおでかけしましょう。
寄生虫
春に続いて、夏もフィラリアやノミ・ダニといった寄生虫の予防を継続することが大切です。
フィラリア
蚊が媒介するフィラリア(犬糸状虫)症は、夏場は特に注意が必要です。
フィラリアは、蚊が吸血する際に体内に侵入し、心臓や血管に寄生します。
フィラリア症は、重症化すると命にまで危険が及ぶ怖い病気なので、予防薬の投与を忘れないようにしましょう。
ノミ・マダニ
ノミやマダニといった寄生虫も、春に引き続き夏も注意が必要です。
アレルギー反応で皮膚に痒みが出たり、ノミやマダニが媒介する病原体に感染してしまったりするリスクがあるので、しっかりと予防しましょう。
もし、愛犬・愛猫の体にマダニが付いているのを発見した際は、ご自身で取らずに動物病院へ連れていきましょう。無理に取ろうとすると、マダニの口が皮膚に残ってしまったり、マダニの病原体を愛犬・愛猫の体内に押し込んでしまったりする危険性があります。
現在では、フィラリアやノミ・マダニ、その他の内部寄生虫をまとめて予防できるオールインワンタイプのお薬が主流となっています。しかし、お手軽になった反面、投薬を忘れてしまうオーナー様が増えています。
カレンダーに投薬予定の印をつけるなど、投薬を忘れない工夫をしましょう。
殺虫剤
虫が多く発生する夏場は、殺虫剤の使用にも注意が必要です。
市販されている殺虫剤は哺乳類への毒性が少ないものが多いですが、大量に摂取してしまうと体に害を及ぼす危険性があります。
スプレータイプのものを使用する際にしっかり換気をすることはもちろん、置き型の害虫駆除剤を愛犬・愛猫が誤って食べてしまわないようご注意ください。
また、草むらに殺虫剤や除草剤などが撒かれている可能性もあるので、おでかけやお散歩の際に草を食べてしまわないよう注意しましょう。
レプトスピラ症
暑い夏に涼を求めて、愛犬と一緒に川や湖などにレジャーに出かける方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その際に気を付けていただきたいのが「レプトスピラ症」です。
レプトスピラ症は、野生のネズミなどがもつレプトスピラという細菌に感染することで発症します。野生のネズミの尿で汚染された土壌や水辺から感染することが多く、水辺のレジャーでの感染例が多く報告されています。
人間にも感染する人獣共通感染症の一つで、重症化すると肝臓や腎臓に悪影響を及ぼし、命にかかわる怖い病気です。
レプトスピラ症は、7種以上の混合ワクチンで予防が可能です。愛犬と一緒に川や湖などへおでかけする予定がある場合は、事前にかかりつけの獣医師様に接種するワクチンの相談をしましょう。
誤食
愛犬を連れてバーベキューをする方もいらっしゃるかと思います。ときには愛犬にお肉を少しおすそわけ…なんてこともあるのではないでしょうか。
その際にご注意いただきたいのが「誤食」です。
バーベキューシーズンの夏には、ワンちゃんにとって危険な玉ねぎや長ねぎなどを食べてしまったり、割りばしや竹串などを飲み込んでしまったりという事故が多く報告されます。
愛犬をバーベキューに連れていく際は目を離さないようにし、必ず誰かが一緒にいるようにしましょう。
花火・雷
夏と言えば、花火大会や雷など、ワンちゃん・ネコちゃんにとって聞きなれない大きな音がたくさん発生する季節でもあります。
人間にとっては風情ある夏の風物詩ですが、ワンちゃん・ネコちゃんにとっては恐怖の対象となってしまうことがあるので注意が必要です。
このような大きな音によってパニック状態になったり、異常な行動を示したりする状態を「音恐怖症」や「雷恐怖症」と呼び、これらはワンちゃん・ネコちゃんの心の病気とされています。
愛犬・愛猫が大きな音を怖がってしまった際に、一番大事なのは「オーナー様が落ち着いていつもどおりにふるまう」ことです。オーナー様が大声を出したり怖がってしまったりすると、愛犬・愛猫にもそれが伝わり、余計に怖がってしまう可能性があります。
また、安心させようといつも以上になでたりなだめたりすることも、逆効果となってより怖がらせてしまう危険性があるといわれています。
音に対する恐怖感を和らげるには、まずはシャッターやカーテンを閉めたり、窓のない部屋へ避難したり、テレビの音量を大きくするなど、外の音や光を感じにくくしてあげることが重要です。音がしている間に大好きなおやつを与えたり、夢中になれる遊びを一緒にしたりして気を紛らわせることも効果的です。
また、日頃からクレートトレーニングを行うなど、愛犬・愛猫が落ち着ける環境を事前に作ってあげることで、パニック状態になるのを防げる場合もあります。
怖がる様子がひどい場合は、大きな音に慣れさせるための行動治療やサプリメント、薬を用いた治療が必要になる場合もあります。可能であれば怖がっているときの様子を動画に残し、かかりつけの獣医師様に相談するようにしましょう。
まとめ
今回は、愛犬・愛猫と一緒に夏を乗り切るために気を付けていただきたいポイントについてご紹介せていただきました。遠くへおでかけする場合は、何かあったときのために事前に周囲の動物病院を調べておくと安心です。
これらのポイントに注意して、愛犬・愛猫と楽しい夏の思い出をいっぱい作ってくださいね!